場当たり的なトランプ流外交が墓穴を掘る日
Trump Boxed Himself In
南北朝鮮の軍事境界線で金正恩と会い注目を集めたトランプだが KCNAーREUTERS
<中国と北朝鮮に気が付いたら譲歩──カジノ流の「ディール」外交はいずれツケ払いを迫られる>
この3日間はすごいことがたくさんあった。多くの成果があった! ドナルド・トランプ米大統領が、そんな上機嫌なツイートをしたのは6月末のこと。
その週末、トランプは大阪で開催された20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席と会談し、膠着状態にあった米中貿易交渉を再開することで合意。さらにその後、南北朝鮮の非武装地帯を訪問して、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と電撃会談し、世界中のメディアをにぎわせた。
だが、こうしたトランプの場当たり的な外交は、自らの手足を縛る結果をもたらしている。
確かに習との首脳会談は、金融市場とアメリカの農家を安堵させた。トランプと習は貿易交渉を再開すること、そしてその間、アメリカは中国製品に対する新たな追加関税を課さず、中国はアメリカの農産物を購入することを約束したというのだ。
だが、この合意で、中国側はなんら目に見える譲歩をしていない。そもそも中国は追加関税に関して、トランプが身動きを取れないことを知っていた。攻撃の手を緩めれば、来年の大統領選のカギを握る米中西部の労働者階級にそっぽを向かれる恐れがある。その一方で、追加関税の規模を拡大すれば、中国の報復関税を招き、既に大打撃を受けている農家(やはりトランプの重要な支持層だ)を苦しめることになる。つまりトランプは手詰まり状態にあったのだ。
一方、追加関税以外の部分では、トランプは明らかに譲歩した。米政府は国家安全保障上の懸念があるとして、中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)との取引をやめるよう国内外に働き掛けてきたのに、それを部分的とはいえ(しかもファーウェイ側の状況は何も変わっていないのに)撤回した。このことは、トランプ政権の信憑性を傷つけた。
大阪でのG20サミット後、トランプは朝鮮半島へと飛び、金とも核問題に関する米朝交渉を再開することで合意した。
2月にベトナムで行われた米朝首脳会談が物別れに終わったのは、北朝鮮が「核兵器とミサイル開発計画の相当部分は維持するが、寧辺の核施設に国際的な査察を受け入れるので、アメリカは経済制裁を緩和するべきだ」という立場を堅持したからだ。