最新記事

香港

香港の不動産市場がデモで急落、「先行き暗い」か「悲観は無用」か

2019年8月5日(月)11時20分
カルヤン・クマル

BOBBY YIP-REUTERS

決して広くない土地に高層ビルが立ち並ぶ風景で知られる香港(写真)。その不動産価格が今、下落の兆しを見せている。業界筋のみるところ、長期化しているデモが不動産市場に大きな影響を及ぼしている。

香港の不動産市場は、世界でもトップ水準の人気と価格を誇る。しかし専門家によれば、逃亡犯条例改正案に抗議して既に2カ月以上続くデモ活動の影響で暗雲が広がり、現在は高層マンションなどの購入が次々とキャンセルされているという。

6月に香港の不動産価格は大幅に値崩れし、住宅販売件数も4カ月ぶりの低水準にとどまった。6月最終週には、週ごとの住宅販売数が今年最大の落ち込みを記録した。今後1〜2カ月のうちに、さらに下落すると予想する専門家もいる。

今後、アメリカの景気減速や米中貿易戦争の激化が予測されることも手伝って、香港の不動産市場の「先行きは暗い」と、米不動産サービス業ジョーンズ・ラング・ラサールのデニス・マーは言う。「これまでも、米経済の『風邪』や『くしゃみ』は香港の不動産市場に打撃を与えてきた」

抗議活動はデベロッパーを萎縮させ、長期投資の意欲をそいでいる。各種金融機関などのリポートによると、7月には多くの買い手が高額物件の購入を取りやめた。キャンセルした買い手は、たとえ違約金を払うことになっても、価格下落による損失を避けたいと考えたようだ。

しかし長期的な視点で見れば、それほど悲観することはないと、マーは言う。「参考になるのは2014年の雨傘運動だ。市場は冷え込んだが、その後回復した」

この記事を書いている時点で、香港のハンセン不動産株指数は下落が続く。香港の金融システムの安定には不動産業の成長が必須だが、復活の芽はあるか。

<2019年8月13&20日号掲載>

2019081320issue_cover200.jpg
※8月13&20日号(8月6日発売)は、「パックンのお笑い国際情勢入門」特集。お笑い芸人の政治的発言が問題視される日本。なぜダメなのか、不健全じゃないのか。ハーバード大卒のお笑い芸人、パックンがお笑い文化をマジメに研究! 日本人が知らなかった政治の見方をお届けします。目からウロコ、鼻からミルクの「危険人物図鑑」や、在日外国人4人による「世界のお笑い研究」座談会も。どうぞお楽しみください。


202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英総合PMI、4月速報値は11カ月ぶり高水準 コス

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月速報値は51.4に急上昇 

ワールド

中国、原子力法改正へ 原子力の発展促進=新華社

ビジネス

第1四半期の中国スマホ販売、アップル19%減、ファ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中