最新記事

女性問題

ミャンマー人権侵害は家庭でも「骨が折れるほど妻を殴る」

2019年8月23日(金)13時55分

米国の資金で実施された「人口・保健調査」によれば、ミャンマーでは少なくとも5人に1人の女性が配偶者から暴力を受けている。家庭内暴力を受けた女性、息子と撮影に応じた。8月7日、エーヤワディーにある村で撮影(2019年 ロイター/Ann Wang)

ミャンマー南部の自宅で1歳の娘をあやしながら、Nu Nu Ayeさんは、夫が自分を殴打した理由を語った。「飼っているおんどりの面倒を見なかったため」である。性交の求めにも応じなかった。

村の長老が仲介した話し合いの場で、夫は「必要に応じて」また妻を殴ると言った。

「彼の暴行はその後さらにひどくなった」と、Nu Nu Ayeさんは語る。ついには、彼女が寝ている間に絞め殺そうとするところまでいった。

米国の資金で実施された「人口・保健調査」によれば、ミャンマーでは少なくとも5人に1人の女性が配偶者から暴力を受けている。複数の人権活動家は、報告されていない事例も多く、この数字も過小評価だとする。家庭内暴力(DV)を禁止する明確な法律はない。

Nu Nu Ayeさんの証言についてロイターは裏付けを取れていないが、彼女のような事例は地元の有力者に仲介を頼むのが普通であり、配偶者による暴力はたいていの場合、私的な問題とみなされる。

ノーベル平和賞受賞者のアウン・サン・スー・チー氏率いる現政権は、女性を暴力から守る法律の制定に取り組んでいる。人権問題に取り組む活動家らは、DVを含めた暴力から女性を保護できるようになると期待している。

だが、法案は2013年に提案されたものの、今も草案の段階で足踏みしている。その規定について賛否が分かれ、夫婦間のレイプを違法とすることなどについて見直しが行われている。

立法化の遅れに人権活動家らは焦燥感を募らせている。ミャンマーの文民政府は軍部と権限を分け合う複雑な制度のもとで統治に当たっており、こうした明らかに文民政府の管轄下にある分野でさえ、改革は遅々として進まず、失望を招いている。

「法律の制定に十分すぎるほど時間がかかっているが、まだ待たされている」と、人権活動家の1人、Nang Phyu Phyu Lin氏は言う。

ロイターはミャンマーの社会福祉・再定住省に質問を送ったが返答はない。電話でもコメントを求めたが、回答を得られていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

フォード、第2四半期利益が予想上回る ハイブリッド

ビジネス

NY外為市場=ドル一時155円台前半、介入の兆候を

ワールド

英独首脳、自走砲の共同開発で合意 ウクライナ支援に

ビジネス

米国株式市場=S&P上昇、好業績に期待 利回り上昇
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中