最新記事

香港デモ

100日が経過した香港デモの不確かな未来

Are Hong Kong’s Protests Dying Down?

2019年9月20日(金)13時30分
ジェームズ・パーマー (フォーリン・ポリシー誌シニアエディター)

香港デモの参加人数は徐々に減ってきている(写真は19日に人間の鎖で反政府の意思を表した学生たち) Jorge Silva-REUTERS

<今年6月の100万人デモから100日が経ち、いま香港のデモ隊は一時の勢いを失いつつある>

今年6月に「逃亡者条例改正案」をきっかけに香港でデモが始まってから、100日が過ぎた。少なくとも現時点では、デモ隊の参加者は減ってきている。背景には地下鉄へのデモ隊の入場が規制されていることや、またデモが数カ月に及び自然に参加者が減っていることもあるだろう。

しかし香港市民の、特に警察に対する怒りは根強く残っている。「警察によってデモ隊が殺害され、その事実が隠蔽されている」という噂も絶えない。

追い込まれた香港特別行政区の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、来週から香港政府と市民との間で緊張を緩和するための公開対話を開催する意向を表明。しかし活動家らからは、根本的な問題の解決にはならないと集会をボイコットする動きも出ている。

またフォーリン・ポリシー誌の記事が指摘するように、デモ隊と当局の交渉は双方に実質的な指導者がいないことによって進んでいない。

もう後戻りはできない

デモが下火になっても、人々の心情は消えない。香港の若者たちは、自分たちが中国人とは思っていないし、香港政府が自分たちの代表だとも思っていない。林鄭は、デモ弾圧について警察に責任を取らせることは約束していない。中国政府は、返還から50年が経過して「一国二制度」が適用されなくなる2047年まで、中国のやり方を香港に強要し続けるだろう。再びデモが起こる条件は揃っている。

(今月17日に米議会で証言したジョシュア・ウォンら香港の民主活動家)


空気の読めない中国政府

そして中国は状況を読み違え続けている。今月11日、マカオのカジノ業界の大物パンジー・ホーが香港女性連合の代表としてジュネーブの国連人権理事会の会合に派遣され、香港デモによって自身が「抑圧されている」と感じていると証言した。中国政府は、過激なデモによって香港の一般市民が抑圧されていると言わせたいようだ。しかし、香港の若者が蔑視するエリート層を代弁するホーのような人物を使うことで、中国政府は香港市民からどれだけ乖離しているかをさらしてしまった。

近づく中国建国70周年

中国は建国70周年の記念行事を10月1日に控えて、習近平(シー・チンピン)国家主席に恥をかかせないよう、特に強いプレッシャーを感じている。このため香港では、地下鉄の入場制限が強化されたり、デモ隊の逮捕者が増えたり、デモ開催が禁止されたりするだろう。その一方でまた、「逃亡犯条例改正案」の正式撤回のように香港政府の短期的な妥協が見られる可能性もある。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 6

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 9

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 10

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中