最新記事

中国

中国は「祝賀御列の儀」をどう報道したか?

2019年11月12日(火)13時45分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

「日本天皇即位パレード 12万人近くが観礼」 と、環球時報は敬意を示した Kim Kyung Hoon-REUTERS

10日に行われた天皇陛下の即位祝賀パレードを中国共産党が管轄するテレビ局や新聞などの官側メディアが一斉に報道しただけでなく、ウェイボーなどにも多くの声が寄せられており、削除されていない。

官側の報道

まず11月10日午後7時のニュースで、中国共産党が管轄するテレビ局である中央テレビ局CCTVは簡潔に報道したあと、7時12分にCCTVのネット端末で文字と華やかな写真により、「日本徳仁天皇即位パレード:天皇は勲章をつけ、皇后はティアラを」という見出しで「祝賀御列の儀」を報道した。

そこには中国共産党機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」電子版「環球網」の速報が使われ、かなり詳細に「祝賀御列の儀」を伝えている。記事に含まれている内容を列挙すると以下の通りだ。

●日本時間11月10日午後、日本の徳仁天皇(ご)夫妻は告示としての「即位の礼」の最後の儀式である「祝賀御列之儀」を行なった(中国文には「ご夫妻」の「ご」に当たる文字はないので、中文を翻訳しているため、翻訳文の中では「ご」を省く。他の敬称も同様)。

●天皇夫妻はオープンカーに乗ってパレードを行い、沿道に並ぶ多くの庶民の祝福を受けた。

●これは徳仁天皇夫妻が1993年6月に結婚した時以来の二度目のパレードであった。

●共同通信によれば、徳仁天皇夫妻は当日午後、皇居正面を出発して、途中、警視庁、国会議事堂、自民党本部などを通って、4.6キロの距離を赤坂御所までパレードした。

●天皇は燕尾服に勲章をつけ、皇后はティアラ(tiara)を頭につけていた。皇嗣(こうし)秋筱宮夫妻および安倍晋三首相などが乗った別の車も隊列に加わった。

●共同通信社は、「台風ハギビスがもたらした被害を考慮し、本来、即位大典の後すぐに行われるはずだった祝賀御列の儀を今日まで延期した」と伝えた。また今回の儀式の後、今月14日から15日に日本ではさらに皇位継承の重要な儀式である「大嘗祭(だいじょうさい)」などの活動が控えている。

●今年4月30日、日本の明仁天皇が退位した。5月1日には徳仁皇太子が即位し、日本の第126代天皇となり、日本は正式に「令和」の時代に入った。10月22日、徳仁天皇は国内外に即位を宣言する「即位礼正殿の儀」を東京の皇居宮殿内に執り行い、100以上の国の元首や王室、政府高官、各界代表を招き、日本皇室の関係者や、三権の長、各県知事など約2000人が参列した。

以上だが、ここまで完璧に日本の天皇即位に関する現状を伝えた報道も少ないのではないだろうか。同様のものはさまざまな形で転載され、また環球時報は別途「日本天皇即位パレード 12万人近くが観礼」という記事を報道している。この「観礼」という言葉は、祝賀行事などを観覧するという意味で、日本語にもあるのだが、日本ではあまり使わない。せめて観覧となるが、ここに「観礼」という漢字を持ってきたことに、「皇室に対する敬意」が現れている。この漢字を使っていることには少々驚いた。

この記事もまたネットユーザーがよく見る新浪(sina)サイトなど、多くのサイトに転載されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、利下げ前に物価目標到達を確信する必要=独連

ワールド

イスラエルがイラン攻撃なら状況一変、シオニスト政権

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ビジネス

中国スマホ販売、第1四半期はアップル19%減 20
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中