最新記事

日韓関係

韓国の「リトル東京」から日本人が消える?

2019年11月22日(金)15時30分
佐々木和義

韓国ソウルの「リトル東京」、東部二村洞から日本人が減少している...... 撮影:佐々木和義

<日韓関係や北朝鮮の動向など、日本と韓国を取り巻く状況の変化が在韓日本人の居住環境に影響を及ぼしている......>

韓国ソウルの「リトル東京」、龍山区東部二村洞(トンブイチョンドン)に居住する日本人の減少が止まらない。朝鮮日報が2019年11月に取材で訪れた東部二村洞の不動産会社社長は、体感で1〜2年の間にリトル東京に居住する日本人駐在員が30%〜40%減少したと回答した。

リトル東京と呼ばれるきっかけは1970年代に遡る

外務省が発表した「海外在留邦人数調査統計」令和元年版によると、韓国に在住する日本人は2018年10月1日時点で3万9403人。平成30年版のデータでソウル市に居住する日本人は1万2655人となっており、龍山(ヨンサン)区が最も多い2423人で、1179人の麻浦(マポ)区が続いている。

東部二村洞がリトル東京と呼ばれるようになったきっかけは1970年代に遡る。日韓の国交回復後、1970年代から日本企業の韓国進出がはじまった。国情が不安定な時代、日本大使館等が発信する無線とラジオは在韓日本人の生命線だった。

南山山頂から送信される電波を安定して受信できる地域への居住が求められたが、南麓の梨泰院は在韓米軍人等の歓楽街で、隣接する漢南洞は欧米人の居住地でもある。住宅地開発がはじまったばかりの東部二村洞が日本人居住区として選ばれた。

東部二村洞には「日本語可能」を掲げる不動産会社が軒を連ね、日本語に対応する医院や歯科、日本料理店などが集まっている。地域のスーパーは日本の食材を扱い、日本人主婦が買い物に訪れる。東部二村洞はまた、日本人学校に通学するスクールバスの唯一の発着地で、下校時間になると停留所近くの公園は日本語一色になる。

ソウルの市内バスは韓国語と英語のみだが、東部二村洞はすべての停留所で日本語のアナウンスがあり、韓国語ができない日本人が生活に不自由することはない。

東部二村洞に次いで日本人が多い麻浦孔徳(コンドク)は、日系企業が事務所を構える市庁周辺等への利便性が高い地域だ。2011年には空港鉄道の孔徳駅が開業し、金浦空港や仁川空港とも繋がったが、区内にある日本人学校に通学する方法はなく、単身赴任者など子を帯同しない駐在員が居住する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中