最新記事

映画

プロレスで夢をかなえた家族の絆『ファイティング・ファミリー』

A Family of Champions

2019年11月30日(土)14時40分
ジャニス・ウィリアムズ

レスリングジムを営む家族の夢を果たすためにサラヤ(ピュー、中央)はWWEの晴れ舞台を目指す ©2019 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC., WWE STUDIOS FINANCE CORP. AND FILM4, A DIVISION OF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

<WWEで成功した英国出身の実在のスター、ペイジと熱くて愉快な家族を描いた話題作>

およそプロレスとは無縁のスティーブン・マーチャントがプロレス映画『ファイティング・ファミリー』の脚本と監督を引き受けたのは、人気俳優で元プロレスラーのドウェイン・ジョンソン(リング名はザ・ロック)に迫られたから。そして女子プロ界の女王ペイジ(昨年引退)とその家族のドキュメンタリー(2012年)に心を動かされたからだ。

「以前は試合を見たこともなかったがね」。マーチャントは本誌にそう語った。「でもこの家族には負けた。兄と妹の絆にも、家族の夢をかなえた妹の姿にも負けた」

この映画がプロレスの世界を描いているのは事実。思い切り笑えるし、手に汗握る壮絶なシーンもある。ジョンソンが本人の役で出演して、花を添えているのも事実だ。そしてペイジ(本名はサラヤ・ジェイド・ベビス、演じるのはフローレンス・ピュー)が激しいトレーニングに耐え、強い意志と力で14年に21歳の若さで世界最大のプロレス団体WWE(ワールド・レスリング・エンターテインメント)の女王となるまでの道のりを、克明に描いたのも事実だ。

しかしこの作品の軸になるのは感動的な(しかも存分に笑える)家族の物語だ。この一家はプロレスという仕事に誇りを持ち、どんな時も互いに支え合っている。

妹の成功と兄の挫折

ペイジ役のピューは本誌に語った。「あの家族、すごく粗暴で、すごくおかしく、すごく賢く、すごく愛せる。支え合ってるし、子育ての仕方も、自分たちの仕事へのプライドもすごい」

ペイジが女王になれたのは家族のおかげだとピューは言う。「両親は頑張り屋で、ペイジと兄をずっと支え続けた。だから、みんなで成功をつかむことができた」

ペイジの家族はイギリスにいる。そして彼女は単身アメリカに渡り、フロリダにあるWWEの施設で厳しい訓練と疎外感に耐え、スターへの道を駆け上る。そのプロセスを、マーチャント監督は温かく描き出した。一方、WWEへの挑戦に失敗して苦悩する兄ザックの姿も印象的だ。

ザックを演じたジャック・ロウデンが言う。「本気で追い掛けたい夢があるのに、門前払いにされる。それは人生で最もつらいことの1つだと思う。ザックは家族の期待の星だった。そしてWWEのテストを2回受けたけど、2回とも不合格だった」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米P&G、通期コア利益見通し上方修正 堅調な需要や

ワールド

男が焼身自殺か、NY裁判所前 トランプ氏は標的でな

ビジネス

ECB、6月以降の数回利下げ予想は妥当=エストニア

ワールド

IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中