最新記事

香港のこれから

【デモ隊の告白12】「プロテスタントとカトリックが支援に駆け付けた」香港の牧師

CONFESSIONS OF A MASK

2019年12月8日(日)07時40分
ビオラ・カン(写真・文)

PHOTOGRAPH BY VIOLA KAM

<半年を超え、長期化する香港デモ。デモ参加者たちが何のために戦ってきたか、それぞれの本音を聞いた本誌「香港のこれから」特集より>

香港で逃亡犯条例改正案に反対するデモが始まって6カ月。身の安全を守るため、デモ参加者のほとんどはマスクで顔を隠してきた。

時に暴徒と非難されながら、彼らは何のために戦ってきたのか。その素顔と本音を香港人の写真家・ジャーナリストが伝える。

本誌12月3日号(発売中)「香港のこれから」特集で取り上げた、15人のデモ参加者による「仮面の告白」。その1人をここに掲載する。

牧師 譚敏(38)

教会では若者と在職青年の支援を担当し、牧師として抗議活動の現場にいる。聖書にはこう書かれている。「それは、ただ公義を行い、誠実を愛し、へりくだってあなたの神と共に歩むことではないか」(ミカ書6章8節)。その言葉に従って行動してきた。

6月12日に催涙ガスが乱射された場面を目撃した。パニック状態となって逃げ出そうとする人、恐怖で泣きだした人、どうしたらいいのか分からなかった人もいた。若者たちは何の過ちを犯し、なぜこのような恐怖を体験しないといけないのかを、自分に問い掛けた。伝道者としての私は、何ができるのだろうかと考えた。

衝突の中に割り込んで、仲裁役を試みた。傷つけられた彼らは怒りから抜け出せず、怒りに支配され、その結果体にさらに傷を負う可能性がある。そうならないように情緒面の支援から始めた。

今回の抗議活動には、プロテスタントとカトリックの有志が宗派を超えたチームを立ち上げ、支援に駆け付けた。祈祷会も教会の中だけではなく、街中で行われた。こうしてキリスト教信者が目覚め、政治と宗教の関係について考えるようになった。

香港の希望というのは、香港人精神をどうやって生かすかだ。政府が変わらなくても、香港人が香港人の特質を生かせば、まだ希望はある。

<2019年12月3日号「香港のこれから」特集より>

※他のデモ参加者による「仮面の告白」:
【デモ隊の告白1】「前線にも行った。香港にはまだ希望を持っている」女子高校生
【デモ隊の告白2】「北京の仕事を辞めて香港に戻り、消火部隊に入った」25歳女性
【デモ隊の告白3】「民主はなくてもイギリス人は愛国心を押し付けなかった」運転手
【デモ隊の告白4】「僕は会社にも行くが、闘争こそが真実」フル装備の香港人男性
【デモ隊の告白5】「この街が好きな理由を取り戻したい」香港人救急ボランティア
【デモ隊の告白6】「次の世代のために自分が銃弾を受け止める番」20歳女性
【デモ隊の告白7】「中国本土で生まれ、愛国心のある子供だったが」24歳男性
【デモ隊の告白8】「香港が中国のただの1つの省になってほしくない」中産階級の男性
【デモ隊の告白9】「警察を調査しないと、みんなの気が済まない」駅で花を供える女性
【デモ隊の告白10】「なぜ若者が遺書まで書き残し、立ち上がるのか」断食をした老人
【デモ隊の告白11】「レノンウォールの『成長』に衝撃を受けた」見守る香港女性たち

20191203issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル北部の警報サイレンは誤作動、軍が発表

ワールド

イスファハン州内の核施設に被害なし=イラン国営テレ

ワールド

情報BOX:イランはどこまで核兵器製造に近づいたか

ビジネス

マイクロソフトのオープンAI出資、EUが競争法違反
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中