最新記事

医療

新型コロナウイルス治療の人工呼吸器が世界的不足 軍も協力し増産態勢

2020年3月28日(土)10時16分

出荷先についての悩みも

英国で呼吸器疾患・救命救急医療の顧問医として働くラハルデブ・サーカー氏は、「集中治療室に入った患者の死亡率は50―60%と推測される」と語る。重篤な状態に陥った患者に人工呼吸器を使用できなければ、「数時間で死に至る」と同氏は言う。

人工呼吸器メーカーとして世界最大手の1つ、スイスのハミルトン・メディカルは、今年の生産台数を約2万1000台に増やしたいとしている。昨年は1万5000台だったが、マーケティング担当者も生産ラインに回すなどの措置を予定している。だが、対応できる範囲を超えた注文が殺到している今、同社はどこに製品を出荷すべきか、困難な判断に直面している。

ハミルトン・メディカルのアンドレアス・ウィーランドCEOによれば、同社は最も切実なニーズを抱える国、特にイタリアを優先しているという。ハミルトン・メディカルでは先週400台の人工呼吸器をイタリアに送り、近日中にさらに出荷できる見込みだ。だが、それは同時にいくつかの国の政府からの要請を断ることを意味する、とウィーランドCEOは言う。結果的に、ある国はハミルトン・メディカルを禁輸対象リストに載せることを示唆するという攻撃的な反応を見せているという。

「新型コロナウイルスの感染がほとんどないのに、対応準備として念のため人工呼吸器を確保しておくだけという国には出荷しないようにしている。最も厳しい緊急事態を抱える国のニーズに応えようとしている」とCEOは語る。

ハミルトン・メディカルによれば、人工呼吸器のグローバル市場は年間10億ドル以上の規模で、売上高のシェアでは同社が約4分の1を占めるという。他の人工呼吸器メーカーとしては、米国のレスメド、スウェーデンのゲティンゲ、ドイツのドレーゲルベルク、中国の北京誼安医療などがある。

各社によれば、中国での需要は頭打ちになったが、ウイルスの拡大が続くなかで、イタリアをはじめとする欧州諸国、米国からの需要は急増しているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パリのソルボンヌ大学でガザ抗議活動、警察が排除 キ

ビジネス

日銀が利上げなら「かなり深刻」な景気後退=元IMF

ビジネス

独CPI、4月は2.4%上昇に加速 コア・サービス

ワールド

米英外相、ハマスにガザ停戦案合意呼びかけ 「正しい
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 10

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中