最新記事

中国

志村さん訃報で広がる中国非難の中、厚労省の「悪いのは人でなくウイルス」は正しいのか

2020年4月1日(水)11時20分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

言論を封殺したのは武漢市長や書記などの幹部だったが、しかし幹部がそうしなければならないのは習近平の顔色を窺っているからであり、一党支配体制が強制する言論弾圧により思考力も判断力も麻痺しているからだ。中国の至るところに武漢と同じ幹部がいる。これは一党支配体制と言論弾圧が招いた結果なのである。

李文亮医師の警鐘に耳を傾けていれば、新型コロナウイルスは絶対にここまで広がってはいない。

責任は誰にあるのか、明確だろう。

WHOに緊急事態宣言を出させないようにした習近平

1月31日付けコラム<習近平とWHO事務局長の「仲」が人類に危機をもたらす>や1月27日付けコラム<「空白の8時間」は何を意味するのか?──習近平の保身が招くパンデミック>でも述べたように、習近平はWHOが1月23日に出そうとしていた緊急事態宣言を出させないように必死で画策した。

もし1月23日にWHOのテドロス事務局長が緊急事態宣言を出していたら、あるいはせめて、1月30日に緊急事態宣言を出す際に「但し、中国への渡航と貿易を禁止しない」などという条件を付けて緊急事態宣言を骨抜きにするようなことをしていなければ、いま人類はここまでの危機に追い込まれて苦しむこともなかっただろう。

人類を滅亡の危機にまで追い込んでいるのは習近平の保身であり、WHOのテドロス事務局長の習近平への忖度だ。

コロナ禍は「人災」なのである。

いま中国は

3月31日現在で、中国のコロナ患者の数は3,052人にまで減少し、中国国内で感染した新規感染者の数はここ一週間ほど「ゼロ」を記録している。新規感染者は海外からの渡航者に限られ、厳格な水際対策を断行している最中だ。

中国国内にはまだ無症状感染者はいるが、その人たちは3月26日付けコラム<中国の無症状感染者に対する扱い>に書いたように隔離されている。皮肉なことに中国の監視社会が効果を発揮していると言っていいだろう。

つまり、中国は全人類に新型コロナウイルスを巻き散らしておきながら、自分自身はほぼ感染拡大から抜け出し、経済復帰に既に着手しているのである。分野によっては復帰率98%の所もあり、アメリカの感染者が16万を超える勢いにあるのをしり目に、サッサと自国だけ経済復帰に邁進している。

習近平「ウイルスに国境はない」

習近平は本来なら全世界に対して、そして全人類に対して謝罪しなければならないはずなのに、医療部隊や医療支援物資を一帯一路参加国に送っては「習近平こそが人類の救世主」と言わせている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ空爆 住民に避難要請の数時間後

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 3

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 6

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 7

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 10

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中