最新記事

コロナ対策

「コロナ疲れ」浮き彫りに、専門家が対策呼びかけ──英調査

2020年4月20日(月)15時50分
松丸さとみ

REUTERS/Steven Watt

<イギリスの専門家は、新型コロナウイルスからのネガティブな影響が精神面に出始めていると警告し、アプリなどデジタル技術を活用した介入が必要だと訴えている......>

3000人対象の調査、「コロナ疲れ」浮き彫りに

新型コロナウイルス感染症の流行からくる不安や、外出自粛などによるストレスは、「コロナ疲れ」などと表現されている。しかし「疲れ」などという軽い言葉では表現しきれないような不安や恐怖を抱く人もいるのではないだろうか。

英国では3月23日に外出禁止令が出され、国全体が「ロックダウン」状態になった。この数日後に英国で行われた2つの調査から、同国内ではその時点ですでに、コロナウイルスによる影響が人々の精神面に出ていたことが明らかになった。

この調査結果をもとに、メンタルヘルスのさまざまな分野で活躍する専門家24人が共同で、英精神医学専門誌「ランセット・サイキアトリー」に意見論文を発表した。専門家らは、新型コロナウイルスからのネガティブな影響が精神面に出始めていると警告し、アプリなどデジタル技術を活用した介入が必要だと訴えている。

調査は3000人以上を対象に、「新型コロナウイルス流行により、精神面で心配なことはあるか」、「心の健康を保つために何かしているか」などについて尋ねた。

2つの調査のうち1つは、メンタルヘルスに関する英慈善団体MQ:トランスフォーミング・メンタル・ヘルスが実施。電子メールやソーシャル・メディア(SNS)を使い、2198人から回答を得た。2つ目の調査は、英調査会社イプソス・モリがオンラインで行ったもので、1099人が回答した。

「先行き見えない」、「景気の悪化」で不安

2つの調査結果をまとめた報告書によると、コロナウイルス感染拡大による精神面への影響で気になることとして多かった回答は、「不安」「孤立」「メンタル面が不調にならないか」「心の問題への支援や医療サービスを受けられなくならないか」「家族や人間関係」だった。

「不安」の主な原因は、「パンデミックの先行きが見えない」、「雇用や経済面」、「食料や医療の確保」、「自分や家族がコロナにかからないか・コロナで死なないか」、などだった。また、メディアやSNSでの解説を繰り返し、または強迫的に見てしまうことから、不安感がより刺激されるという人も多かったという。

「孤立」については、人と距離を置くことやロックダウンでの外出制限など、新型コロナウイルスの感染予防策として実施していることが、精神面に悪影響を及ぼすと心配している人が多いことが分かった。家族など大切な人と会えない、人と交流ができない、エクササイズができない、などを訴える声もあった。調査報告書は、ロックダウンが長期にわたる場合、心の健康を損なわないために、孤立や孤独に対処するための方策が必要だとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

IAEA、イラン核施設に被害ないと確認 引き続き状

ワールド

オランダ半導体や航空・海運業界、中国情報活動の標的

ワールド

イスラエルがイラン攻撃と関係筋、イスファハン上空に

ワールド

ガザで子どもの遺体抱く女性、世界報道写真大賞 ロイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中