最新記事

テレビ

TBSとテレビ東京、新型コロナウイルス対策で「全収録中止」 芸能界にも感染者で大英断

2020年4月10日(金)18時16分
木村 隆志(コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者) *東洋経済オンラインからの転載

他局のテレビマンからは「やられた」「ホッとした」の声も聞かれます(撮影:梅谷 秀司)

4月2日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてTBSは「4月4日から19日までの2週間、ドラマやバラエティにおけるロケとスタジオ収録の中断」を発表しました。その理由に挙げられたのは、「不特定多数の方々と接したり、大人数が集まったりするケースが多い」「一般の方々や出演者の方々、番組スタッフへの感染予防を最優先」の2点。さらに20日以降も状況を見て「再開するかどうか」の判断を下すようです。

TBSは前日にも今春スタートのドラマ3作(『半沢直樹』『私の家政夫ナギサさん』『MIU404』)と、大型特番『オールスター感謝祭』の放送延期を発表していました。ともに4月の重点番組だけに、「これを延期するくらいなら他の番組も厳しいのでは?」と不安視されていましたが、それに続く対応は思いのほか早かったのです。

また、テレビ東京も、「3日から生放送を除く収録を中断し、1週間をめどに社員の出社を2割程度に絞る」ことを発表しました。TBSとテレビ東京の対応は、明らかに他局よりも一歩進んだものであり、ネット上に「妥当」「他局も続くべき」などの好意的な声が寄せられています。

ただ、発表時から批判の声が挙がっていたことも事実。批判の声を挙げた人々には、どんな言い分があり、テレビ局に何を求めているのでしょうか。

テレビ局の対応が遅すぎる理由

否定的な声で最も目立つのは、「世間はとっくに自粛ムードなのに遅すぎる」「今まで社員やタレントの健康をどう考えていたのか」「テレビ局だけ特別だと思っているのだろう」という対応の遅さに関する声。

志村けんさんが亡くなったことが報じられたときから、人々の間に「感染しない、感染させないことを最優先にすべき」という意識がグッと高まっていることをあらためて感じさせられました。それと同時に、「自分たちがそうしているのだから、ほかの人たちも絶対にそうするべき」という大義名分にもとづく同調圧力が高まっているとも言えるでしょう。

では、なぜここまで「危ない」と言われていた収録を中断できなかったのか。部署も職種も異なる3人のテレビマンに匿名を条件に尋ねたところ、「各所への影響の大きさを考えると、なかなか踏み切れない」という同じような言葉が返ってきました。テレビマンたちが言う各所とは、まずスポンサー、次にタレント、制作会社とフリーランス、そして局員。ビジネスである以上、クライアントであるスポンサーの意向を踏まえるのは当然ですし、ある程度の理解が得られたとしても、出入り業者の収入を絶てば生活が危うくなることを危惧したのでしょう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金与正氏、ロシアとの武器交換を否定=KCN

ワールド

米大統領、トランプ氏の予測違いを揶揄 ダウ4万ドル

ビジネス

アングル:米株が最高値更新、市場の恐怖薄れリスク資

ビジネス

米国株式市場=ダウ一時初の4万ドル台、利下げ観測が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中