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TBSとテレビ東京、新型コロナウイルス対策で「全収録中止」 芸能界にも感染者で大英断

2020年4月10日(金)18時16分
木村 隆志(コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者) *東洋経済オンラインからの転載

ただ、「#再放送希望」のハッシュタグが飛び交う様子は、テレビ業界にとって、痛しかゆしの状況。それは再放送を求める声が、「これまでテレビがいかに多くの名作を生んできたか」の証明であるとともに、「現在の番組に満足していない」という意志表示でもあるからです。

テレビマンたちにとっては、「再放送を求める気持ちはわかるけど、プロとして認めたくないところがある」のが正直なところ。「通常の収録ができなくても、どのように楽しませるか」「工夫を凝らした再編集で、どのように笑わせるか」、腕の見せどころでもあり、気合の入っているテレビマンもいるはずです。特に再放送より再編集を選ぶであろうバラエティの作り手たちが、どんな対策を施して意地を見せるのか、期待していいでしょう。

報道・情報番組へのやまない批判

収録を中断しても撮影済みのストックがいくつかあるため、すぐにそれほどの変化は感じないでしょう。しかしその後、「当たり前のように見ていた番組が見られない」という状態が訪れたとき、人々は思っていた以上の違和感を抱くはずです。

たとえば、「毎朝同じものを食べないと落ち着かない」「枕が変わるだけで寝られない」という人がいるように、人間は日常生活の違和感に異常事態を察知しやすいところがあります。現在は「不要不急の外出自粛を控え、テレワークが進んでいる」など在宅率が高いこともあり、テレビ番組の変化に対する違和感は、より大きいのではないでしょうか。

さらに言えば、そんな日常生活の違和感こそ、「今は誰もが我慢のとき」「みんなでこの苦しい状況を乗り切ろう」という一体感につながりやすい傾向があります。現在、報道・情報番組では、「頑張りましょう」「気をつけましょう」というメッセージを発信し続けていますが、聴覚に訴える言葉は表面的な印象を与えがちなだけに、視覚に訴える形で違和感を抱かせたほうが効果は期待できるでしょう。

その報道・情報番組はTBSやテレビ東京も、「感染防止に最大限の配慮を行いながら取り組む」という方針を変えていません。ここにきて出演者たちが距離を取るなどの視覚に訴える違和感を見せることで、視聴者に事の重大さを実感させているものの、それでもなお批判はやまないのです。

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