最新記事

日本社会

危機に直面して自分を責める時代はもう終わりにしよう

2020年5月20日(水)13時20分
舞田敏彦(教育社会学者)

日本や韓国は「内向型」の逸脱行為(自殺)が圧倒的に多い AH86/iStock.

<新型コロナウイルスによる深刻な経済低迷で、失業を苦にして自殺する人の増加が懸念されるが......>

新型コロナウイルスの影響で、職を失う人が増えたらどうなるか。日本で懸念されるのは自殺の増加だ。失業率と自殺率の長期推移を描くと、気味が悪いくらいシンクロしている(拙稿「失業率とシンクロする自殺率の推移」本サイト、2019年1月9日)。

関係を定式化すると、失業率6%で年間自殺者3万人、10%で4万人、15%まで高まると5万人を越える事態が想定される。寒気のする事態だが、各地で雇い止めが起きていることを思うと、あり得ないことではない。

生活苦のあまり他人の財産を強奪する、自暴自棄になって無差別大量殺人に走るなど、外向型の(他人に攻撃が向かう)犯罪の増加も怖い。先月、コロナの影響で失職し、空腹に耐えかねてスーパーに押し入った高齢男性のニュースが報じられた。

失業率は強盗認知率とも相関している。<図1>は、2つの指標のカーブを描いたものだ。失業率は労働力人口に占める失業者の割合で、強盗認知率は人口10万人あたりの強盗事件認知件数をいう。

data200520-chart02.png

70年代半ばからのトレンドだが、カーブの形が似ている。90年代の不況期に激増し、景気回復と共に下がる傾向はほぼシンクロする。1975~2018年の44年間のデータで相関係数を出すと、+0.849にもなる。

「失業→強盗」という因果関係を思わせる事実だ。失職して、どうしようもない生活苦に陥った。頼れる人もいない。こういう極限の危機状況に置かれ、規範から外れた行いをせざるを得ない時、人はどういう行動をとるか。大きく2つのベクトルがあり、自殺するか、他人の財産や権利を侵害してでも生き延びるか、という2つに分かれる。前者は内向型、後者は外向型の逸脱行動だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、6月以降の数回利下げ予想は妥当=エストニア

ワールド

男が焼身自殺か、トランプ氏公判のNY裁判所前

ワールド

IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解

ワールド

イスラエルがイランに攻撃か、規模限定的 イランは報
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中