最新記事

第2波

テキサスは1日の新規感染者5500人、主要都市でICUの占有率97%も

Houston ICUs at 97 Percent Capacity; Texas Coronavirus Cases Break Records

2020年6月25日(木)13時50分
エミリー・チャコール

バーの営業が解禁された5月22日、顧客の手に消毒液をかける警備員 Nuri Vallbona-REUTERS

<マスク着用も社会的距離の確保も呼びかけず、強気で経済活動を再開してきたテキサス州で感染者と入院患者が急増、臨界に達しそうだ>

テキサス州は6月24日、新型コロナウイルスの新たな感染者数が過去最多を記録したと発表。同州ヒューストンでは、病院の集中治療室(ICU)がほぼ満床となった。

ヒューストンのシルベスター・ターナー市長は24日に市議会で、市内のICU病床の97%が埋まっていると明らかにした。医療崩壊は目前だ。同市にある医療複合施設テキサス・メディカルセンター(TMC)の報告書によれば、このうち27%をCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の患者が占めている。TMCが今週発表したデータを見ると、市内のICU病床の占有率は、22日の時点で90%に達していた。

人口2900万人のテキサス州では、州内全域で新型コロナウイルスの新規感染者や入院患者が急増している。同州保健当局(DSHS)が発表しているデータによれば、中でもその最も深刻な影響を受けている地域のひとつがヒューストンだ。最新のデータでは、23日午後の時点でヒューストン都市圏にある医療施設で受け入れ可能なICU患者を179人と推定していた。

マスクもせずビジネス再開

同州の新型コロナウイルス関連の入院患者は24日にこれまでで最多を記録し、DSHSが確認したところでは4000人を超えている。6月12日に(それまでで最多の)2166人を記録して以降、入院患者数は右肩上がりだ。

ヒューストンの保健当局は22日、同都市圏では、新型コロナウイルス関連の入院患者の数が5月31日以降に177%も増えたと発表。感染者のICU入院件数も64%増えている。

テキサス州では24日、新たに5489人の感染を確認。1日の感染者数としては、20日に記録した4430人の記録を大幅に上回り、これまでで最多を記録した。DSHSによれば、同州の累計感染者数は6月はじめには約6万4800人だったが、23日午後の時点では12万300人超にのぼっており、今月に入って急増している。このうち現時点でまだ回復していない人はおよそ4万7400人と推定される。

テキサス州は全米のなかでも最も早い5月はじめから経済活動を再開した州の一つ。同州のグレッグ・アボット知事は、経済活動の再開にあたって、公共の場所でのマスク着用も社会的距離の確保も求めなかった。だが州内で新規感染者や入院患者が急増しているのを受け、22日の会見では住民にマスクの着用を促した。

「マスクの着用は、テキサス州の経済活動を維持するための助けになる。何も対策を取らなければ、感染の拡大はさらに悪化する。そうなれば人々の命が危険にさらされることになるし、最終的にはより多くの企業や店舗を閉鎖しなければならなくなる」と知事は会見で語った。

【話題の記事】
イタリアを感染拡大の「震源地」にした懲りない個人主義
「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に
巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
異例の猛暑でドイツの過激な「ヌーディズム」が全開

20200630issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月30日号(6月23日発売)は「中国マスク外交」特集。アメリカの隙を突いて世界で影響力を拡大。コロナ危機で焼け太りする中国の勝算と誤算は? 世界秩序の転換点になるのか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロ中、ガス輸送管「シベリアの力2」で近い将来に契約

ビジネス

米テスラ、自動運転システム開発で中国データの活用計

ワールド

上海市政府、データ海外移転で迅速化対象リスト作成 

ワールド

ウクライナがクリミア基地攻撃、ロ戦闘機3機を破壊=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中