最新記事

朝鮮半島

北朝鮮、韓国とのホットライン9日正午に切断へ

2020年6月9日(火)14時20分

北朝鮮は、南北間の連絡手段の完全な遮断に向けた第一歩として、韓国とのホットライン(直通電話回線)を切断すると発表した。朝鮮中央通信(KCNA)が伝えた。写真は金正恩朝鮮労働党委員長、提供写真(2020年 ロイター)

北朝鮮は9日、南北間の連絡手段の完全な遮断に向けた第一歩として、韓国とのホットライン(直通電話回線)を切断すると発表した。朝鮮中央通信(KCNA)が伝えた。

北朝鮮はここ数日、韓国の脱北者団体が北朝鮮の体制を批判するビラを散布している問題を巡り、韓国の対応を批判し、南北連絡事務所や他の事業の廃止を予告するなどしている。

KCNAは、金正恩朝鮮労働党委員長の妹、金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長や金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長ら北朝鮮政府高官が「南(韓国)に関する取り組みは、敵に対するものに完全に転換すべき」という決定を下したと報道。

その第一歩として、北朝鮮は南北連絡事務所の連絡手段と、双方の軍および首脳間のホットラインなどを9日正午に切断すると伝えた。

さらに、北朝鮮人民は「不誠実で狡猾(こうかつ)な韓国当局者の行動に憤りを感じている」とし、脱北者が北朝鮮の最高指導者を侮辱するのを韓国当局者は無責任に容認したと非難。「これは全ての北朝鮮人民に対する敵意の表れだ」とし、「韓国当局者はわれわれを失望させるばかりであり、彼らと対座する必要はなく、彼らと話し合う問題はないという結論に至った」と報じた。

韓国の聯合ニュースによると、韓国政府は9日午前に連絡事務所の北朝鮮側担当者への定時連絡や軍同士のホットラインでの連絡を試みたが、北朝鮮側は電話に出なかった。

8日午前に連絡事務所の北朝鮮側担当者は、2018年以来初めて定時連絡の電話に出なかった。ただ、午後の連絡には応じた。

韓国統一省はホットラインについて、基本的な連絡手段で維持する必要があるとした上で、今後も合意した原則に従って朝鮮半島の平和と安定を目指すとの見解を示した。

交渉の材料との見方

アナリストらは、北朝鮮の動きは脱北者の問題だけが原因ではないようだと指摘する。新型コロナウイルスの世界的流行や国際社会による制裁で、北朝鮮は経済が一段と圧迫されている。

韓国の慶煕大学の朱宰佑(チュ・ジェウ)教授は「北朝鮮はわれわれが考えているよりも悲惨な状態にある」と分析。「韓国から何かを絞り出そうとしているようだ」とした。

米国を拠点とする全米北朝鮮委員会(NCNK)のダニエル・ワーツ氏は「定期的な連絡手段が最も必要とされるのは危機の際だ。そのため、北朝鮮は連絡手段を断ち切ることでリスクの高まった状況を作り出そうとしている」と指摘。「北朝鮮がよく使う駆け引きだとはいえ、危険なものだ」と語った。

*内容を追加しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・東京都、新型コロナウイルス新規感染13人 2桁台8日連続
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・3万人死亡のイタリアが欧州で真っ先に国境開放した切実な理由
・街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...


20200616issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月16日号(6月9日発売)は「米中新冷戦2020」特集。新型コロナと香港問題で我慢の限界を超え、デカップリングへ向かう米中の危うい未来。PLUS パックンがマジメに超解説「黒人暴行死抗議デモの裏事情」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正ゆうちょ銀、3月末の国債保有比率18.9%に 

ビジネス

ユーロ圏GDP、第1四半期改定は前期比+0.3% 

ワールド

EXCLUSIVE-米財務省、オーストリア大手銀に

ワールド

焦点:米の新たな対中関税、メキシコやベトナム経由で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 8

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中