最新記事

保険

コロナの経済損失を補填「パンデミック保険」続々誕生 都市封鎖の売上減もカバー

2020年7月19日(日)12時02分

新たなウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が常態化する可能性に備え、保険会社が新種の商品を生み出している。ニューヨークで6月撮影(2020年 ロイター/Mike Segar)

新たなウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が常態化する可能性に備え、保険会社が新種の商品を生み出している。レストランから映画製作会社、電子商取引企業に至るまで、新たなパンデミックが襲った時に生じる損失をカバーする設計だ。ただ、保険料は安くないかもしれない。

新種の保険を提供する企業は、既存の保険カバーに新たな商品を追加しようとする大手保険会社や保険ブローカーから、ニッチを商機にしようとする企業まで幅広い。主流の保険会社はこれまで、パンデミックを戦争や核爆発並みのリスクとして分類にしてきたため、ニッチ系企業は、その「穴」を埋めるチャンスが生まれたとみている。

例えば、IT企業の米マシーン・カバーは来年から、ロックダウン(封鎖)に対応する保険の提供を目指している。アプリその他のデータソースを用い、レストラン、百貨店、美容室、自動車ディーラーなどさまざまな業種の取引量を計測し、一定水準を下回れば、その理由に関わらず保険金を支払う。

創業者のInder-Jeet Gujral氏は、こうした対象範囲は、新型コロナ以前に企業が事業中断保険を契約した際には、保険金が支払われると思っていた類のものだと指摘。「大きなチャンスだと思っている。コロナ後の世界では、パンデミック保険を掛けないのは、火災保険を掛けないのと同じくらい無責任な行為になるだろうから」と話した。

穴を埋める

パンデミックを保険対象から外していた一部保険会社は、新型コロナ危機でほとんど打撃を被らずに済んでいるため、おおむね、感染症への保険をもっと提供すべきだとの圧力には抵抗している。

実際のところ、イベント中止、その他の損害保険金を支払った保険会社で、今回をもってパンデミックをカバーの対象から外した企業もあるほどだ。

英国のリスク管理協会・エアミックは最近、新型コロナ危機によって手ごろな価格の保険が不足したため、協会の会員企業は別のリスク管理方法を探しているとした。

英保険市場ロイズ・オブ・ロンドン(ロイズ保険組合)の保険会社、ビーズリーは6月、ロックダウンの時代におけるその穴を埋めようと、音楽その他の文化、企業イベントなどをオンライン配信する主催者が、技術的な障害で損失を被った際の偶発事故保険を販売し始めた。

ビーズリーのマーク・サイモンズ氏は「こうした配信イベントは技術の正常な作動が命なので、故障があると収益が大打撃を受ける」と説明する。

世界最大の保険ブローカー、マーシュは、仏保険大手・アクサ傘下のアクサXLや、米オールステート保険傘下のデータ企業・アリティと組み、「社会的距離」対応を迫られる米スーパーマーケットチェーン、レストラン、電子商取引企業などを支援する。

これらの企業は宅配需要の急増に伴い、自前の車や自転車で配送する契約スタッフを雇っているが、そうした働き手を対象とする自賠責保険を見つけるのは難しい。

マーシュなどは、配送距離に応じて保険料が決まり、通常の自賠責保険よりも安価な保険を設計した。客を乗せて回るより、ピザを配送する方がリスクは小さいからだという。

「パンデミックが終わっても、消費者への宅配は続くと考えている」とマーシュのロバート・バウアー氏は話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、ミシュスチン首相の続投提案 議会承

ビジネス

英GDP、第1四半期は予想上回る前期比0.6%増 

ビジネス

日経平均は反発、好決算物色が活発 朝高後は上げ幅縮

ビジネス

再送-午後3時のドルは155円半ばで底堅い、円弱含
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 7

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中