最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナウイルス、患者の耳から見つかる

Coronavirus Can Infect the Ear, Study Suggests

2020年7月27日(月)16時55分
カシュミラ・ガンダー

新型コロナウイルスの感染で、耳に後遺症が残る可能性もあるかもしれない Martin Barraud-iStock.

<新型コロナ患者の耳と頭蓋骨の一部でウイルスが見つかった。今後は、耳から感染するリスクにも注意が必要かもしれない>

新型コロナウイルスが、患者の耳の中と頭蓋の骨の一部から発見された。

発見したのは、新型コロナ感染症で死亡した患者らを解剖した研究チーム。中耳と耳の後ろにある乳様突起という中空の骨に、新型コロナウイルスを発見した。

中耳は鼓膜の奥にある空気に満たされた空間で、連結した3つの小さな骨でつながれ、内耳に音を伝える。この発見は、米国医師会雑誌(JAMA)の耳鼻咽喉科頭頸部外科専門誌に掲載された。

研究の対象となったのは、80代の女性1人と60代の男女1人ずつ計3人の新型コロナウイルスによる死亡者だった。解剖は80代の女性の場合は死後48時間、60代の男性は死後16時間、60代女性は死後44時間の時点で行われた。

研究チームは遺体の乳様突起を取り出し、中耳からもサンプルを採取、ウイルス検査を行った。2人の患者の乳様突起または中耳が、陽性反応を示した。

この研究を共同で行ったジョンズ・ホプキンス大学医学部頭頸部外科のマシュー・スチュワート准教授は本誌に、この解剖には、1900年代初頭の器具と技術を使用しなければならなかったと語った。手動のドリルなど現在使われている手法は、空中に液滴や粒子が飛ぶため、感染の危険があるからだ。

予想外のウイルスの存在

ウイルスは耳のこの部分に感染したのか、表面に付着しただけなのかという質問に対し、スチュワートは様々な理由から、決定的な答えはわからないと語った。

しかし、体のこの部分の内側の層は肺の気道や副鼻腔の組織と同じなので、研究チームは組織が感染していたと考えている。

研究チームはきわめて少数の患者を対象とした研究で、これまで感染が知られていない体の部位からウイルスが見つかったことに驚いている、とスチュワートは言う。これは重症の新型コロナウイルスの患者の耳にはウイルスがいる可能性があることを示している。

この研究結果は、限定的なものだ。対象となった人数が少数で、新型コロナウイルスが体に与える影響を追跡することが目的であったため、この研究には対照群がない。また、解剖までの時間がかかるほど、ウイルスが組織に見つかる可能性は低くなる。

それでも、体内のこの部分にウイルスの存在が確認されたことで、耳の周辺を診察する医療従事者が感染の危険に気づく役に立つことを、スチュワートは願っている。

<参考記事>新型コロナに「脳が壊死」する合併症の可能性
<参考記事>がんを発症の4年前に発見する血液検査

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中