最新記事

アメリカ政治

トランプ最強の指南役、義理の息子クシュナーの頭の中

The Utility Player

2020年8月1日(土)15時20分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

外交問題から選挙運動まで多様な問題に大きな影響力を持つクシュナー TOM BRENNERーREUTERS

<縁故採用と批判を浴び続けた娘婿で大統領上級顧問のクシュナーが語る、コロナ対策と中東和平、大統領選の舞台裏>

遅からず(早ければ約半年で)ドナルド・トランプの大統領時代には歴史の審判が下る――のだが、その一節にはきっと、こう記されるだろう。この大統領に最も大きな影響力を持ち得たのは義理の息子、ジャレッド・クシュナーだったと。

トランプの娘イバンカの夫で、現在39歳のクシュナーは事実上の首席補佐官であり、大統領を支える面々の起用にも解任にも影響力を行使している。外交政策の要としてNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉などに関与し、新型コロナウイルス対策には主要メンバーとして参加。懸案の警察改革の推進役ともなり、再選を目指すトランプ陣営の知恵袋としても、今や欠かせない存在だ。

ファーストレディーは別として、大統領の親族でこれほどの影響力を持ち得た人物といえば、まず思い浮かぶのは故ジョン・F・ケネディ大統領の下で司法長官を務めた弟のロバート・F・ケネディだ。

あの兄弟にも、常にクールな兄と情熱的な弟という違いはあった。しかしトランプと娘婿クシュナーの違いはあまりに大きい。傲慢無礼なトランプに対し、クシュナーは冷静沈着。ちゃんと勉強しているし、いざとなれば野党・民主党にも協力を求める。批判を浴びても、いらついた様子は見せないし、裏で自分を哀れんだりもしない。

不動産会社は経営していたが、政治の素人だったのは事実。ワシントン・ポスト紙で誰かがクシュナーに好意的評価を下したときは、「あいつにも妻にもホワイトハウスで国家機密を扱う資格はない」と怒りの投稿を寄せた読者もいた。事実関係としてはそのとおりで、彼が縁故採用なのも間違いない。

しかし「大統領上級顧問」のクシュナーは、そんな批判を気にも留めない。本誌の取材にはこう答えている。「私は何でも屋だ。どんな問題でも大統領に一定の見解を示せるし、なんらかの診断と処方を与えられる」

どんな問題であれ、クシュナーはまず専門家の意見を聞き、過去の政策や対策を検討し、そして今までとは違う何かをやろうとする。「過去の失敗をなぞるのは無意味だ」と彼は言う。だから既存のものをぶち壊す。このへんはトランプと似ている。

本稿の執筆に当たり、筆者はクシュナーに2度、直接取材した(新型コロナウイルスのせいで電話経由だが、たっぷり話せた)。周辺の関係者数十人にも取材した。結果、「何でも屋」クシュナーは有能な人物であることが分かった。トランプに対して絶対的に忠実であることも。

以下、クシュナーが取り組んできた主要な政策に即して検証してみる。

<関連記事:トランプ姪の暴露本は予想外の面白さ──裸の王様を担ぎ上げ、甘い汁を吸う人たちの罪

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月速報値は51.4に急上昇 

ワールド

中国、原子力法改正へ 原子力の発展促進=新華社

ビジネス

第1四半期の中国スマホ販売、アップル19%減、ファ

ビジネス

英財政赤字、昨年度は公式予測上回る スナク政権に痛
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中