最新記事

香港

日本が国安法の対象になりつつある香港民主派逮捕と保釈

2020年8月13日(木)21時46分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

国安法第42条には以下のように書いてある。

――香港特別行政区の法執行機関及び司法機関は、香港特別行政区で施行されている勾留及び裁判期間に関する法律の規定を適用するにあたり、国家安全に危害を与える犯罪案件に関して、公正、適時な処理を確保し、国家安全に危害を与える国家安全犯罪を効果的に防止し、抑圧し、処罰しなければならない。

裁判官が、容疑者が今後二度と再び継続して国家安全に危害を与えるような行為をしないと確信するに足る十分な理由がない限り、保釈を認めてはならない。

この最後の条文は要注意だ。

ここからは、ひとたび起訴されて裁判にかけられたが最後、「司法保釈」はまずあり得ないと覚悟しないとならないということが見えてくるのである。無期懲役もあるということだ。

今般香港警察は「リンゴ日報」から25箱の資料を押収しており、この資料の中にどれほど多くの内容が詰まっているかを考えると、その被害は甚大であろう。

日本を巻き込んだ周庭さんの波動効果

香港市民のほとんどは英語を日常会話としてきたので、民主活動家たちも「英語で」国際社会に情報を発信し、「どうか力を貸して下さい」と訴えてきた。すなわち主として「英語圏」、とりわけアメリカを対象としていた。

したがって基本法第23条にある「外国の政治組織または団体が香港特別行政区で政治活動を行うことを禁止し、香港特別行政区の政治組織または団体が外国の政治組織または団体と連携することを禁止する」という文言は、主としてアメリカを対象としていた。

特に香港の中国への返還後も、香港の民主党の創設者・李柱銘氏が、特別行政区としての地位をアメリカが認めた「香港政策法」を根拠に、「アメリカは香港の民主を支援する義務があり、アメリカ大統領が支援の義務を怠る場合は、アメリカとの経済行為を打ち切ることが出来る」と発言したことから、中国政府は殊の外アメリカをターゲットにしてさまざまな動きを見せてきた。

ところが今般、周庭さんは英語だけでなく日本語も流暢に話す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ホンダ、電動化とソフトへ投資倍増 30年度までに1

ワールド

中国、生産能力過剰論に反論 米欧の「露骨な貿易保護

ワールド

ウクライナが米欧を戦争に巻き込む恐れ、プーチン氏側

ビジネス

商業用不動産、ユーロ圏金融システムの弱点=ECB金
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 8

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 9

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中