最新記事

米安全保障

アラスカ漁船がロシア艦隊と鉢合わせ、米軍機がロシア軍機6機を牽制

Russian Warships Sailed 'Right Through' Alaska Fishing Fleet: Sailors

2020年8月31日(月)17時24分
デービッド・ブレナン

アラスカ沖上空でロシアのTu-142対潜哨戒機を、米軍のF-22ステルス戦闘機などがインターセプト(3月9日) NORTH AMERICAN AEROSPACE DEFENSE COMMAND

<ベーリング海でタラ漁をしていたアメリカの漁船団の前に突如、ロシア艦隊が現れ、「ここはミサイルエリア、危険、出ていけ」と命令されて、漁船団はパニックに陥った。「こんなことは許されない」はずなのだが>

8月26日、漁船数隻で漁をしていたアラスカの漁師たちは、ベーリング海の国際水域で軍事訓練を行うロシア海軍と遭遇し、ただちに米軍当局に報告した。

現場にいた漁師の一人は、28日にアラスカ公共メディア(A P M)で、あのロシア艦隊のようなものを見たのは初めてだと語った。

26日にトロール漁船ベステローデン号上でロシア海軍の演習を目撃したスティーブ・エリオットは、ベーリング海でスケトウダラ漁をしていたときに、船の無線からロシア人の声が聞こえてきたという。その声はすぐにロシア語から英語に変わり、近くの漁船は軍艦の進路から外れるようにと警告してきた。

「ロシアの軍艦3隻と補助艦2隻が真っ直ぐこちらに向かってきた」と、船上からエリオットは証言した。「ロシアの艦隊は、漁船団のすぐそばを通りすぎた」

ロシアの軍用機から警告を受け、その場を離れるよう命じられた船もあったとAPMは報じた。翌27日、米軍当局はロシア軍が軍事訓練を行っていることは承知しており、付近のロシア軍の活動はすべて追跡していると述べた。

「でていけ」と警告

だが漁船団は、この事件のおかげで漁が妨害され、危険な目にあったと主張する。「何の予告もなく、本当にびっくりした」と、ベーリング海のスケトウダラ漁に従事する大型漁船13隻の組合で事務局長を務めるステファニー・マドセンは言った。

「少なくとも24〜36時間は混乱がひどくて、漁どころではなかった。その間、何が起きたのかと事実を確認しようと必死だった」と、マドセンは語った。「演習が続く間は、何が起こるかまだわからない」

APMによれば、軍事演習は9月まで続く予定だという。

タラ漁船ブルーノース号乗組員のマイク・フィッツジェラルドは、ロシアの軍用機が6度も船の進路を妨害し、指定した航路で水域から「最高速度で」出ていくように命じられたと語った。

北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)は28日、ロシアのTu-142対潜哨戒機6機──2機1組が3組──の進路をインターセプト(牽制)したと発表。ロシア軍機はアラスカ防空識別圏を約5時間飛行し、アラスカ沿岸から50海里以内に接近したが、アメリカやカナダの領空には入らなかったという。

<参考記事>中国軍艦5隻、オバマ氏訪問のアラスカ沖で確認 米「意図不明」
<参考記事>ロシア爆撃機がアラスカに接近、米戦闘機がインターセプト

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル34年ぶり157円台へ上昇、日銀の現状維持や米

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中