最新記事

中東

イスラエルとUAEが国交正常化で合意 イランを孤立させたい米外交戦略が背景に

Trump Says UAE, Israel Reach Peace Deal, First of Its Kind in Over 25 Years

2020年8月14日(金)16時00分
トム・オコナー、エリザベス・クリスプ

イスラエルとUAEの和平合意について発表するトランプ(ホワイトハウス、13日) Kevin Lamarque-REUTERS

<置き去りにされた形のパレスチナはUAEの「裏切り行為」と反発>

ドナルド・トランプ米大統領は8月13日、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が和平合意を結んだと発表した。イスラエルとアラブ国家の間で和平合意が結ばれたのは、約25年ぶりのことだ。

ホワイトハウスが発表した3カ国の共同声明によると、トランプ、UAEアブダビ首長国のムハンマド・ビン・ザイド・ナハヤン皇太子とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は同日、「イスラエルとUAEの完全な国交正常化で合意した」という。

声明は「この歴史的な外交成果によって、中東地域の和平は前進するだろう。これは地域の偉大な可能性を切り開くための、大胆な外交、3人の指導者の確固たるビジョン、そしてUAEとイスラエルの勇気の証だ」と述べ、こう続けた。「この3つの国はいずれも共通の難題に直面しており、今日の歴史的な成果は互いにとって有益なものだ」

UAEのユセフ・アル・オタイバ駐米大使も声明を発表。「今日の発表は中東地域と外交にとって重要な前進だ。これにより、イスラエルによるヨルダン川西岸の一部入植地の併合計画は即時停止され、暴力がさらに悪化する可能性が阻止される。アラブ連盟と国際社会が支持する(イスラエルとパレスチナの)二国家共存の実現の可能性も維持される。和平プロセスに新たな動きと可能性がもたらされる」と述べ、こう続けた。「ヨルダンの安定も強化するものだ」

「より良い未来を約束する合意」

イスラエルが併合を検討しているパレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区と国境を接するヨルダンは、1994年にイスラエルと和平合意を締結。この他のアラブ国家では、イスラエルの隣国のエジプトも1979年に和平合意を結んでいる。

マイク・ポンペオ米国務長官は声明の中で、「イスラエルとエジプト、ヨルダンの間の平和条約は、まだその可能性を十分に発揮してはいない。だが1978年のキャンプデービッド合意と1994年のワディ・アラバ合意以降、エジプトとヨルダンはかなりの経済発展を遂げ、確かな平和の配当を享受してきた」と述べた。

ポンペオはさらにこう続けた。「イスラエルとUAEの間で今回結ばれた和平合意は、それと同じような潜在的可能性を持ち、中東地域全体のより良い未来を約束するものだ。アメリカは、この重要な成果を達成したイスラエルとUAEを祝福する」

ジャレッド・クシュナー米大統領上級顧問は、UAEに続いて近いうちにもう1カ国も、イスラエルとの和平合意にいたる可能性があることを示唆した。

現在22カ国(主にイスラム国家)で構成されるアラブ連盟は、1948年にユダヤ人が建国したイスラエルに反発し、第1次中東戦争を仕掛けた。同時に内戦状態にあったイスラエルから大勢のパレスチナ人が住むところを追われ、他のアラブ諸国に避難した。アラブ諸国は1967年と1973年にもイスラエルと大規模な戦争になり、パレスチナ人の抵抗運動とイスラエル軍の衝突は今日に至るまで続いている。

トランプは1月に、ネタニヤフと連携して新たな中東和平案を発表。中東地域の多くの国はこの和平案に反発し、ホワイトハウスでの発表式典に代表者を派遣したのは3カ国だけだったが、UAEはその1つだった(あとの2カ国はバーレーンとオマーン)。パレスチナはこの和平案への合意を拒否した。

<関連記事:【レバノン大爆発】日頃の戦争を上回る最大の悲劇に団結する中東諸国

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インタビュー:円安の影響見極める局面、160円方向

ビジネス

中国ファーウェイ、自動運転ソフトの新ブランド発表

ビジネス

円債中心を維持、クレジットやオルタナ強化=朝日生命

ビジネス

日経平均は3日続伸、900円超高 ハイテク株に買い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 6

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中