最新記事

ドイツ

極右、反ワクチン、家族連れが入り乱れる奇妙なドイツのコロナ対策抗議デモ

2020年9月10日(木)16時30分
モーゲンスタン陽子

コロナ対策としての活動制限に抗議する人々が国会議事堂前で警察官と乱闘騒ぎに REUTERS/Christian Mang

<8月にベルリンで行われた2つの大規模デモでは、これら極右・右翼の人々と、お年寄りや家族連れなどが一緒になって行進するというやや不思議な光景が展開された...... >

9月3日、ドイツのベルテルスマン財団により発表された調査結果によると、ドイツ政治におけるポピュリズム支持者は2018年に有権者の33%でピークに達したあと、現在は20%まで減少したという。極右政党のAfDなども年々その勢いを失っているが、支持者を失ったことで、さらに過激化することも懸念されている。

暴力の象徴に政治家たちが激怒

8月最後の土曜日、新型コロナ対策への抗議デモがふたたびベルリンで行われた。ドイツをはじめヨーロッパでは感染が急増しており、安全のためこの週末のデモは事前に禁止されていたにもかかわらず、約4万人もが集まった。参加者のほとんどがマスクをつけず、身体距離も確保しなかった。

大部分は平和的な行進だったが、極右過激派が国会議事堂に乱入しようと警察の防御ラインを突破、またロシア大使館前でも右翼過激派と警察との衝突があり、7人の警察官が負傷、200人の逮捕者が出た(ベルリン全体での逮捕者は
約300人)。

この際、右翼過激派たちは黒、白、赤のドイツ帝国(カイザーライヒ)の旗を掲げていた。これはナチスの第三帝国でも一時使用され、現在では禁止となっている鉤十字の旗の代わりに極右が好んで使用するものだ。

これらの暴動に政治家たちが激怒。メルケル首相のスポークスマンは国会議事堂における反民主主義の旗を「恥ずべき光景」と糾弾した。また月曜にはシュタインマイアー大統領が「土曜日の暴力的な暴動は極右思想が私たちの社会に深く根づいていることをまたもや浮き彫りにした」と述べ、極右を絶対に許さないよう、ドイツ国民に呼びかけた。

今回の光景は、1933年、ヒトラーが首相となった4週間後に起きた国会議事堂放火事件を彷彿とさせるとして、政治家たちがとくに敏感に反応したようだ。

いったいどういう集まりなのか

8月にベルリンで行われた2つの大規模デモでは、これら極右・右翼の人々と、お年寄りや家族連れなどが一緒になって行進するというやや不思議な光景が展開された。ベルリンを拠点とする政治・文化誌キケロも、「抗議というよりはフェスティバル」のようであり、「今まで見た中でもっとも奇妙なデモ」と述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU、中国製ブリキ鋼板の反ダンピング調査開始

ワールド

イスラエルはガザ停戦努力を回避、軍事解決は幻想=エ

ワールド

「英国を再建」、野党・労働党が選挙公約 不法移民対

ワールド

マレーシアGDP、第1四半期は前年比4.2%増 輸
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中