最新記事

自然

豪グレートバリアリーフで高さ500メートルの巨大なサンゴ礁が見つかる

2020年10月30日(金)16時30分
松岡由希子

500メートル超の巨大なサンゴ礁が見つかった...... (Schmidt Ocean Institute)

<オーストラリア北東岸のサンゴ礁地帯「グレートバリアリーフ」で、500メートル超の巨大なサンゴ礁が見つかった...... >

オーストラリア北東岸に広がる世界最大のサンゴ礁地帯「グレートバリアリーフ」で、東京タワーや米ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルディングよりも高い、500メートル超の巨大なサンゴ礁が見つかった。基底部は1.5キロにわたり、頭頂部は海面から深さ40メートルの位置にある。

19世紀後半以来の発見

米シュミット海洋研究所は、1年にわたるオーストラリア周辺海域の調査プロジェクトの一環で、海洋調査船「RVファルカー」を用い、グレートバリアリーフ北部の海底の地形図を作成している。

10月20日、豪ジェームズクック大学のロビン・ビーマン博士らの研究チームは、オーストラリア北東部ヨーク岬沖でこの巨大なサンゴ礁と初めて遭遇し、10月25日に遠隔操作型無人潜水機(ROV)「スー・バスチアン」を用いて詳細な調査を行った。4時間以上にわたる調査の様子は、シュミット海洋研究所のウェブサイトやYouTube公式チャンネルでライブ配信されている。

06matuoka1030.jpeg

遠隔操作型無人潜水機による調査の様子

動画は次ページにて

これほど巨大なサンゴ礁が見つかるのは、19世紀後半以来、120年ぶりのことだ。このエリアでは、アオウミガメの繁殖地として世界的に知られるレイン島のサンゴ礁を含め、19世紀後半にグレートバリアリーフから孤立した巨大なサンゴ礁が相次いで7つ見つかっている。

今回発見された巨大なサンゴ礁も同様に、グレートバリアリーフと離れているものの、海底に固定され、他の孤立したサンゴ礁とつながっている。また、このサンゴ礁には、大量の海綿、ウミウチワ、軟質サンゴが生息し、ムネエソやオグロメジロザメなどの魚もみられた。

FK200930_DetachedReef_8-1-scaled.jpg

(Schmidt Ocean Institute)

体長45メートルのクダクラゲと30の新種の海洋種も発見している

シュミット海洋研究所の共同創設者ウェンディ・シュミット氏は、「この予期せぬ発見は、私たちの海に未知の物体や新たな生物が存在することを示すものだ」とし、「従来、海の中を知るための手段は限られていたが、深海で私たちの目となり、耳となり、手となる新たな技術のおかげで、探査能力はかつてないほど高まっている。新しい海の景色が私たちの前に開かれ、生態系や多様な生物が明らかになっていくだろう」と期待を寄せている。

一連の調査プロジェクトでは、今回の発見のほかにも、様々な成果をあげている。2020年4月には、オーストラリア西海岸のサンゴ礁「ニンガルー」近くの海底谷で体長45メートルのクダクラゲと30の新種の海洋種を発見。8月には、5つの未記載種のクロサンゴと海綿を発見している。

11月17日まで作成が続けられるグレートバリアリーフ北部の海底の地形図は、今後、オーストラリア政府の海底マッピングプログラムを通じて提供されるほか、2030年までに地球全体の海底地形図の完成を目指す日本財団の国際プロジェクト「日本財団-GEBCO Seabed 2030」にも役立てられる見込みだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中