最新記事

動画配信

ディズニー、ダンボやピーター・パンの人種差別表現を認める 問題を浮き上がらせるネット配信サービス

2020年10月30日(金)21時30分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

人気の韓国ドラマもネトフリ配信で炎上に?

OTT世界配信サービスと言えば、一人勝ちを続けるネットフリックスだが、そのなかでも韓国ドラマは、いまや配信後世界中でヒットを打ち出す最強コンテンツの一つとなっている。

一方で、韓国ドラマのそれまでの当たり前が、ネットフリックスを通じて世界配信されることによって疑問視される例も登場した。

今年4月から6月まで、SBSにて放送されていた『ザ・キング:永遠の君主』は、同時進行でネットフリックスでも配信されていた。

『相続者たち』『花より男子』などに主演したイケメン韓流スター、イ・ミンホの除隊後初のドラマ主演作として放送前から注目を集めていた『ザ・キング』だが、それだけに俗に「プリバイ」と呼ばれる出来上がる前から買い付ける方法で配信が契約されていた。ネットフリックスは、全16話完成前から配信権を1話あたり20-25億ウォン、全16話で320-350億ウォンを支払ったという。

この買い付け金と韓国国内放送で、製作費は全て回収済みと言われていたが、一報でこのドラマでは、PPLと呼ばれるドラマ内の間接広告が多用され批判の対象となった。

PPLとは、お金をもらってスポンサー商品を劇内で登場させることで、『ザ・キング』では特定のチキン屋さんやカフェが頻繁に登場し、商品紹介とも取れるひと言が台詞に付け加えられていた。

また、ドラマのキャラクターも典型的な「白馬に乗った王子様」といったイメージで、表現が古いと不評だった。結果視聴率も、開始当時からどんどん下がっていき8%ほどで終了している。

今、多様性に配慮した作品でも......

作品を見る世間の目は時代によって変わっていく。制作時にはOKだった表現も、今の時代では非常識に見えてしまうこともあるだろう。過去の作品を改めて現代の目で見直し、考えるうえでOTT配信は良いきっかけとなっている。

一方で、今回のディズニーの件を見ていると、特定の人種を馬鹿にしたギャグ部分は問題外だが、そもそも当時はそれまで多様な人種を作品中に登場させることすらなかったのではないだろうか? もしかしたら、それはステレオタイプでありながら、当時は多様性を取り入れようとした進歩的な表現だったのかもしれない。

例えば、今LGBTQ+のキャラクターが登場するドラマや映画は多い。しかし、大げさな喋り方や毒舌な性格、派手な衣装、女装男装など、現代のわれわれはセクシャルマイノリティーの人々へ、ステレオタイプなイメージを作り出してしまっているのかもしれない。

数年後、多様性が今よりももっと当たり前になった世界では、それは差別表現だと言われる可能性も十分にあるのだ。

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの過激衣装にネット騒然

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 10

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中