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アメリカの一流企業がビットコインを「大量購入」 その狙いは?

2020年10月17日(土)15時01分
木村兼作(公認会計士)

日本では2018年3月に「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」がASBJ(企業会計基準委員会)からリリースされており、日本の会社はこれは参考にクリプトに関する会計処理を行います。

アメリカでは2019年の12月に米国公認会計士協会(AICPA)が "Accounting for and Auditing of Digital Assets(デジタルアセットの会計と監査)"と題されたガイダンスをリリースしています(2020年10月に項目追加)。この指針は正式な会計基準ではないものの、AICPAがリリースしているということで米国の会社はこれを参考にクリプトに関する会計処理を行います。

過去の記事でも紹介しましたが両者の大きな違いは未実現利益の取り扱いにあります。

日本の会計基準ではビットコインは基本的に期末に時価評価し、未実現利益は当期損益として損益計算書(PL)に計上されます。米国の会計基準ではビットコインは基本的に非償却の無形資産として会計処理され、未実現利益は計上されません。

ビットコインのボラティリティは毎年低下しているものの、依然として価格変動の激しい資産です。業績予測など投資家への情報提供を定期的にしなければならない上場会社にとってボラティリティの高いビットコインを保有することでPLの損益が影響を受ける状況は望ましいものとは言えません。

さらに、日本の場合は税務上もクリプトの未実現利益は益金として課税対象になります。税務の観点からも企業はビットコインを保有しづらい状況にあります。

一方で米国の会計基準のもとでは上述のとおり、ビットコインは時価が上昇したとしても時価評価されません。BSが膨らむこともないので資産効率を示す指標は悪化しませんし、PLが影響をうけることもありません。

会計処理の観点からは日本に比べるとビットコインを保有するハードルが低いといえます。(参考:価格の下落局面においては米国基準のもとでも減損処理を通じて簿価の切り下げが行われます)

Squareは今後ビットコインの取得を検討している企業の参考になるように今回のビットコイン取得に関する情報をオープンソースしています。ビットコイン取得に至った経緯や取得方法に加えて会計処理の検討に関する記載もあるので興味がある方は一読することをおすすめします。

企業によるビットコインの獲得競争 - 他社の状況

ビットコインを保有している上場会社はMicroStrategyやSquareだけではありません。https://bitcointreasuries.orgによると2020年10月13日時点でファンドなどを含めると15社が確認されています。

当該サイトの情報によればこの15社が保有するビットコインの合計は 601,479 BTC。これは存在し得るビットコインの 2.86% にあたります。この表が今後どのようになるのか、ビットコインを資産保全の手段として採用する上場会社が増えるのか、非常に興味があります。

【関連記事】ビットコインの収益性を「シャープ・レシオ」で計算して分かること
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