最新記事

日本社会

国際比較で日本は最下位、「収入」「家事分担」共に対等な夫婦の比率

2020年11月18日(水)13時15分
舞田敏彦(教育社会学者)

以上は2国の比較だが、41カ国の対等夫婦の比率を出すと<表1>のようになる。<図1>の緑色の割合だ。

data201118-chart02.jpg

日本の対等夫婦の比率は、調査対象国の中では最も低い。意識の上ではジェンダー観は薄くなっているというが、実態のレベルでみると未だにワーストであることが分かる。2012年の統計だが、この無様な位置は知っておいていい。

日本の場合、対等夫婦の女性のサンプルが少なすぎて検証できないが、他国のデータで幸福度とのクロスを見ると、多くの国でこの群の女性の幸福度は他より高くなっている。男女の役割には幅を持たせた方がよい。稼ぎのない女性はDV被害や貧困と常に背中合わせだし、家事スキルのない男性は定年後にはただのお荷物だ。日本では、妻に去られた(死なれた)男性の自殺率はものすごく高い。

日本は、男女の性役割分業で社会が築かれてきた経緯があり、仕事・家事の双方に求められるレベルが非常に高くなっている。両方をこなすのは難しく、どちらか一方に特化するやり方が通ってきて、未だにそれは強く根付いている。それなら2つの役割のレベルを下げてしまえばよく、最近言われるようになった「ゆる勤(時短)」「手抜き家事」などはそのための戦略だ。これが不可能でないことは、欧米社会のルポルタージュを読むと分かる(『ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が豊かなのか』〔熊谷徹著、青春新書インテリジェンス刊〕など)。

女性の社会進出の促進がスローガンとして掲げられるが、男性の「家庭進出」も伴わないと女性は「仕事・家事・育児」のトリプルの負荷を負うことになる。日本の現状はそうで、女性の家事時間は専業主婦もフルタイム就業者もあまり変わらない。

コロナ禍で在宅生活が長くなっている今が、夫婦の役割差を是正する良い機会だ。

<資料:ISSP「Family and Changing Gender Roles IV - ISSP 2012」

*本稿のデータは、上記調査の個票データを筆者が独自に分析して算出したもの。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ラファ攻撃は「人道上の悪夢」、停戦合意に尽力を=国

ワールド

米英豪、ロックビットのロシア人幹部に制裁 ランサム

ビジネス

米金融政策、想定ほど引き締まっていない可能性=ミネ

ビジネス

米当局、テスラに詳細要求 「オートパイロット」リコ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    「ハイヒールが効率的な歩行に役立つ」という最新研究

  • 8

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 9

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 10

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中