最新記事

不法移民

トランプ公約の「国境の壁」建設、年内完成を急ぐ

Trump's Border Wall Nearly 90 Percent Complete as CBP Races to Finish

2020年11月30日(月)15時30分
カレダ・ラーマン

トランプ大統領の「実績」として残ることになるメキシコ国境の壁(8月20日) Jose Luis Gonzalez-REUTERS

<バイデンもできてしまったものを壊す気はないようだが、地元からは税金の無駄遣いだと批判の声>

ドナルド・トランプ大統領は、不法移民の取り締まり強化を2016年大統領選の焦点とし、不法に国境を越えてアメリカに流入する移民を阻止するためメキシコとの国境沿いに「大きく、美しい壁」を建設することを誓った。

ところがジョー・バイデンが来年1月に大統領に就任する運びとなったため、国土安全保障省(DHS)と税関・国境取締局(CBP)は、国境に全長724.2 キロ(450マイル)の壁を築くというトランプの公約を年末までに果たそうと全力で取り組んでいる。

CBPによると、11月16日の時点ですでに647キロが完成した。

10月下旬、CBPは、建設済みの壁が644 キロ(400マイル)の節目に達したことを祝い、週に約16キロ(10マイル)ずつ新しい壁が建設されていると発表した。

「国境の壁は、トランプ政権が国境警備に真剣に取り組んでいることを示す第一の証拠だ」と、CBPのマーク・モーガン局長代理は述べた。

「この壁はアメリカ人の命を救うだろう。地面からそびえたつコンクリートと鋼が、わが国に入ろうとする危険な人々と、命を奪う薬物を阻止する」

コスト高の僻地でも建設

だがニューヨーク・タイムズ(NYT)の最近の報道によれば、これまでに建設された647 キロの壁のうち、一から建設した部分は約40キロ分にすぎない。それ以外は老朽化したり、車両用の障壁しかなかった部分を改築した。

バイデンは「国境の壁」建設を中止すると言っているが、次期大統領が重視しているのは、トランプの看板プロジェクトを解体することではなく、入国禁止の終了や亡命受け入れ制限の緩和などの移民政策に関わる問題だとNYTは報じている。

バイデンの政権移行チームの一部顧問はNYTに対し、既存の壁を破壊する可能性を否定した。

NYTによれば、現在進行中のグアダルーペ渓谷での壁建設は、コストが非常に高い。希少な鳥類の生息地で、地元の牧畜業者に言わせれば、人里離れているため不法な国境越えはめったに起きない地域だ。

陸軍工兵部隊のジェイ・フィールド広報官は、この渓谷の「難易度の高い」地形で壁を建設するコストは1.6キロ(1マイル)あたり約4100万ドルかかると語った。

それは、今年発表されたCBPの報告書に掲載されている壁の1マイルあたりの平均コストの2倍以上の金額だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア軍の上陸艇を撃破...夜間攻撃の一部始終

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 6

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中