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RCEP締結に習近平「高笑い」──トランプ政権の遺産

2020年11月20日(金)17時35分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

香港を中継地として、「人民元+香港ドル+日本円+韓国ウォン」により構成されるバスケットに裏付けられたステーブルコイン(取引価格が変動しない暗号資産)を発行し、まずはクロスボーダー取引を試験的に試みる。FTAとステーブルコインがあれば、SWIFT(銀行間の国際金融取引に係る事務処理の機械化、合理化および自動処理化を推進するため、参加銀行間の国際金融取引に関するメッセージをコンピュータと通信回線を利用して伝送するネットワークシステム)を経由しなくても取引できる。やがてそれを発展させてユーロのようなアジア圏で共通に使える「アジア元」を形成していこうという「夢」を中国は描いている。一帯一路だけでなく自分の「中庭化」したRCEP領域でもデジタル人民元を普及させていこうという「夢」だ。

それも知らずに中国の罠に嵌っていったら、とんでもないことになる。

アメリカのドル基軸の世界を「いつかは」ひっくり返そうと、中国は虎視眈々と「遠景」を見ているのだ。

もっとも、バイデン政権が誕生したら、すんなりとはいかないにしてもTPPに戻ってくる可能性は否定できず、アメリカは日本をRCEPから引きはがす可能性もあると中国は警戒している。少なくともTPPとRCEPは対抗軸を形成していくだろう。

だからこそ、日本はASEAN諸国とどう付き合っていくかが重要になるのだが、現状ではバイデン政権になっても経済面で中国を封鎖することは相当に困難だろう。

RCEPに参加しなかったインドは

中国にとってインドがRCEPに参加しなかったことは非常に歓迎すべきことなのである。なぜなら人口においても市場やGDP規模のポテンシャルにおいても、インドさえいなければ中国が文句なしにトップでいられるからだ。

それでいて中国はBRICSにおいてインドやロシアと強く結ばれている。

折しも、RCEP締結と連続するような形で、11月17日夜にBRICS首脳会談がリモートで行われ、CCTVの画面にはインドのモディ首相やロシアのプーチン大統領の顔が習近平国家主席の顔とともに大きく映し出された。

今回はワクチンの共有や経済面での相互補助が強調され、中国がインドとはBRICSを通して強く結ばれていることを強調していた。

モスクワにいる友人は中国とロシアの経済協力関係に関して「ロシアにとっての最大の貿易相手国は過去40年ずっとドイツでしたが、習近平政権になってから既にドイツの倍、来年は3倍になるのではないかともいわれています。中露蜜月は経済関係でもかなり明らかです」と語っている。

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