緊急事態宣言でも収束見えぬ強烈なコロナ第3波 昨秋までの対策成功で危機感に緩み
こうした中、広島県は独自に、広島市内の住民など最大80万人を対象とした大規模なPCR検査の実施を検討し始めた。
とはいえ、国内の感染者数の集計に誤差があるとは専門家は考えていない。陽性が確認された人は、医師の診療を受け、保健所に届け出ていると考えられているためだ。
政府のコロナ対策分科会のメンバーである押谷仁・東北大学教授は、検査数を増やすことは重要だとする一方、医療体制がひっ迫する可能性を指摘する。「感染者がどんどん増えている段階にあり、今は検査方針を変えるのは望ましくない」と話す。
厚労省結核感染症課の加藤拓馬課長補佐は、東京の繁華街など感染リスクが高いエリアではすでに大規模な検査を実施してきたと説明する。一方で、検査対象は感染した可能性がある人であり、まったく疑いがない人にまで広げる考えは現時点ではないという。
疲弊する医療現場
最前線で働く現場の医療従事者からしてみれば、冬になって新型コロナが猛威を振るうのは当然予測できることだった。ロイターの取材に応じた3人の医師によると、彼らがそれぞれ働く首都圏の大型病院は数週間前から満床となり、スタッフは疲労が限界に達しているという。
政府は、新型コロナの患者受け入れを病院へ勧告できるよう、感染症法の改正を検討していると報じられている一方、患者を受け入れるよう政府が医療機関に命じる権限は現在はない。厚労省の調査によると、民間医療機関の多くも感染症の受け入れが現時点では可能ではないと答えている。
政府は昨年末、医療機関が重症者病床を増やしたり、医師や看護師などを確保するのを支援するため、今年度の予備費から2693億円を支出することを決めた。しかし、病床を確保する支援が遅すぎたというのが医療関係者らの本音だ。
東京都の新型コロナ入院患者は1月13日時点で3266人。コロナ用病床の約81%が埋まっている。人工心肺装置など呼吸を補助する機器が必要な患者(重症者)は、ここ1カ月で2倍の141人に増えた。
「とにかく対策が遅かった。動くのが遅かった」と、聖マリアンナ医科大横浜市西部病院の桝井良裕・救命救急センター長は話す。「大きなものの考え方で対応しないと、限界が近づいているというのは分かっていた」と、桝井氏は言う。
(Ju-min Park、Rocky Swift、斎藤真理、村上さくら 日本語記事作成:久保信博 編集:田中志保)
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