最新記事

アメリカ外交

核合意問題めぐる米・イラン交渉、始まっても見えないゴール

2021年2月23日(火)14時17分

イランが核兵器を持たないようにするため、米国とイランの外交トップが2008年の夏に初めて会談し、その後に双方が15年のイラン核合意に調印するまで、7年の期間を要した。写真あ2015年7月、ウィーンで行われたイランの核を巡る交渉会場に置かれたイランと米国の国旗(2021年 ロイター/Carlos Barria)

イランが核兵器を持たないようにするため、米国とイランの外交トップが2008年の夏に初めて会談し、その後に双方が15年のイラン核合意に調印するまで、7年の期間を要した。

トランプ前米大統領が離脱を決めたイラン核合意に米国が復帰できる条件で、両国が合意できるかどうかがはっきりするまで、これほどに長い期間を要するとは誰も予想していない。だが、欧米の高官は、実際に交渉が始まっても道のりは長く、険しいと話している。

バイデン米政権は18日、イランの高官と会談して欧米など6カ国とイランが合意した包括的共同行動計画(JCPOA)へ復帰する道筋を探るため、イラン特使のロバート・マレー氏を派遣する用意があると表明した。

イラン政府の発するシグナルは当初、一貫していなかったが、ザリフ外相が21日に「米国が核合意に参加するなら、まず対イラン制裁を解除しなければならない」と述べ、強硬姿勢を示した。

核合意の最も重要な点は、欧米側が制裁を解除する見返りに、イランが核兵器開発につながるウラン濃縮を制限することにあった。イランは長い間、核兵器開発を否定してきた。

契約条件が110ページの本文と付属文書に明記された核合意をどのように復活させるか決めるのは、理論的には難しくない。

だが、実際には2つの理由で交渉は難航しそうだ。その1つはトランプ前大統領が18年5月に核合意から離脱後に科した多数の対イラン制裁。もう1つは、その1年余り後にイランが報復として合意に違反して取った措置にある。

これまでのところ両国とも公式には、再合意に向けてどちらが先に動くかという問題に重点を置いており、いずれも相手側が先だと主張している。

米高官はロイターに、順序の問題は巧妙な策により解決可能で「最も難しい問題ではない」と指摘。それよりも米国のどの制裁が解除されるか、イランが取った措置が撤回できるかが問題だ、との見方を示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:「トランプ2.0」に備えよ、同盟各国が陰に陽

ビジネス

午後3時のドルは一時155.74円、34年ぶり高値

ビジネス

東京ガス、25年3月期は減益予想 純利益は半減に 

ワールド

「全インドネシア人のため闘う」、プラボウォ次期大統
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中