最新記事

事件

サウジのムハンマド皇太子、カショギ記者殺害を承認 米当局が報告書

2021年2月27日(土)12時08分

米国家情報長官室は26日、18年に起きたサウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏殺害事件について、サウジのムハンマド皇太子がカショギ氏の「拘束もしくは殺害する作戦を承認した」とする報告書を公表した。写真はムハンマド皇太子。20年12月、リヤドで撮影(2021年 ロイター/Saudi Press Agency/Handout via REUTERS)

米国の情報機関を統括する国家情報長官室は26日、2018年に起きたサウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏殺害事件について、サウジのムハンマド皇太子がカショギ氏の「拘束もしくは殺害する作戦を承認した」とする報告書を公表した。

カショギ氏は18年、トルコ・イスタンブールのサウジ領事館で殺害。生前は、米紙ワシントン・ポストにサウジ政権に批判的な論説を寄稿していた。

バイデン政権は、同報告書の公表を拒否していたトランプ前政権の路線から一転し、公表に踏み切り、米・サウジ関係再調整に向けたコミットメントを明示した。同時に、イラン核合意復帰や中東地域の諸問題への対処で最も緊密なアラブ同盟国の一つであるサウジとの強い関係維持に向け、微妙なさじ加減での対応が求められている。

国家情報長官室の報告書は、ムハンマド皇太子が意思決定権を握っていたことなどを踏まえ、「カショギ氏をトルコのイスタンブールで拘束、もしくは殺害する計画をムハンマド皇太子が承認したと認識している」とし、「ムハンマド皇太子は2017年以降、サウジの情報機関を完全に掌握していた。こうした状況下は、ムハンマド皇太子の承認なくしてサウジ当局者がこのような活動を実施できる可能性は極めて低い」とした。

米政府はムハンマド皇太子本人に対する制裁措置は見送ったものの、情報機関の副長官を務めたアフメド・アル・アシリ氏と、警備隊のラピッド・インターベンション・フォース(RIF)に対する制裁を発動させた。国家情報長官室は報告書で、RIFがカショギ氏の殺害に関与したとして名指ししている。

このほか、国家による国外のジャーナリストや反体制活動家に対する行動を標的とした新たな措置の下で、サウジ国籍76人を対象にビザ(査証)制限を実施する。

バイデン政権当局者は、米国がサウジとどのような関係を将来的に構築していきたいか、制裁措置と査証制限で明確なメッセージを送ることになると指摘。オースティン国防長官がムハンマド皇太子とすでに協議を行ったことを明らかにした。

別の当局者は、ムハンマド皇太子に対する制裁発動の議論について、米政府は「国の最高レベルの指導者」に対する制裁措置はこれまで一般的に発動させていないと述べた。

また、関係筋によると、バイデン政権はサウジへの武器売却取りやめを検討しているという。「防衛」兵器の売却については容認される見通し。

米国家情報長官室の報告書について、サウジは「容認できない」と反発。サウジ国営通信によると、外務省は声明で「サウジ政府はこの報告書を完全に否定する」と表明。「この犯罪は個人のグループが引き起こしたもので、サウジ政府はこのような悲劇が二度と起こらないよう、必要な対策を講じた」とした。

ただ同時に「サウジ外務省は米国とのパートナーシップが強固であることを確認する」との見解も示した。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、物価圧力緩和まで金利据え置きを=ジェファー

ビジネス

米消費者のインフレ期待、1年先と5年先で上昇=NY

ビジネス

EU資本市場統合、一部加盟国「協力して前進」も=欧

ビジネス

ゲームストップ株2倍超に、ミーム株火付け役が3年ぶ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子高齢化、死ぬまで働く中国農村の高齢者たち

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 6

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 7

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 8

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 9

    あの伝説も、その語源も...事実疑わしき知識を得意げ…

  • 10

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中