最新記事

中国

習近平国賓来日は延期でなく中止すべき

2021年3月2日(火)17時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

こうして日本は中国を経済大国に押し上げていくことに限りない貢献をした。

その証拠を以下の図「対中投資新規企業数と外資実行額の変遷」にお示ししたい。

Endo210302_Xi2.jpg

これは中国商務部が出した『中国外資統計公報2020』と2021年2月に商務部が個別に発表したデータを拾い上げて筆者が独自に作成したもので、改革開放以来の「中国に新規参入した外国企業の数」(折れ線)と「外資の実行額」(棒線)を示した(この図表は3月22日に出版予定の拙著『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』の第七章四「中国共産党とは──建党百年と日本」から引用したものである)。

図表から明らかなように、1992年、93年に特異点のようなピークがある。これこそは日本が1992年10月に天皇陛下訪中まで実現させたためにもたらした効果で、1990年辺りから日本が規制を緩めているために徐々に増加していることが見て取れる。天皇陛下訪中は決定的で、日本がそこまで力を入れるのなら、アメリカもただちに対中経済封鎖を解除して、西側諸国はわれ先にと中国への投資を競うようになるのである。

事実、無限の市場である中国から利益を頂かないと損だという西側諸国が一気に湧いてきた。こうして「対中投資ラッシュ」を招いた。

折れ線や棒線データの詳細な分析は拙著の第七章に譲るが、少なくとも日本が天安門事件後の対中経済封鎖を解除してからというもの、中国の経済が「もう後戻りできないほどに」成長してしまったことは確かだ。2010年にはGDP規模において日本を抜き、2028年にはアメリカを抜くと予測されている。

習近平が国賓として来日すれば、天皇陛下に拝謁するだけでなく、中国は必ず天皇陛下の訪中を強引に取り付けようとする。日本にそれを断る勇気があるのか?断れば経済制裁が待っており、手の付けようがない地獄へのスパイラルが待っている。

日本は中国共産党による言論弾圧や一党支配体制がもたらす「精神性」、「価値観」の中に組み込まれて行っていいのか?

すでに自民党の二階幹事長を始めとした一部の政界人が、中国のシャープパワーに毒されてしまい、日本の政界で隠然たる力を発揮し続けている。中国はこのような影響力を持つ各国政財界の有力者にターゲットを絞って洗脳していくことに余念がない。そのツケを払わされるのは日本国民だ。

新疆ウイグル自治区におけるジェノサイド問題や台湾問題あるいは香港問題など、中国に突き付けなければならない問題点は数多くあるが、日本自身の問題として、日本の一人でも多くの方々が、この現実に目を向けていただきたいと切に望む。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版予定)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

この筆者の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

金融デジタル化、新たなリスクの源に バーゼル委員会

ワールド

中ロ首脳会談、対米で結束 包括的戦略パートナー深化

ワールド

漁師に支援物資供給、フィリピン民間船団 南シナ海の

ビジネス

米、両面型太陽光パネル輸入関税免除を終了 国内産業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 8

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 9

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中