最新記事

人種問題

ドクター・スースの絵本6冊絶版にポリコレ批判

Banned Seuss Site Emerges to Promote Dr. Seuss' Six Canceled Books

2021年3月4日(木)15時17分
アレクサンドラ・ギャレット
ドクター・スースの絵本

スースの作品は今も世界中の子どもたちに愛されているが REUTERS/Mike Blake

<差別に対する責任ある決定と評価の声がある一方で本を「抹殺する」のはおかしいと反論サイト開設>

米絵本作家ドクター・スースの作品のうち6作について、人種差別的な描写があるとして絶版が発表されたことを受けて、3月3日に「Banned Seuss(禁止されたスース)」というウェブサイトが開設された。

「本を抹殺する行為は常軌を逸している」と同ウェブサイトは主張し、こう呼びかけた。「私たちの人間性を守るために立ち上がろう」

ウェブサイト「禁止されたスース」では現在、絶版となった6作品のうちのひとつである『マルベリーどおりのふしぎなできごと』の特集を組んでおり、また同サイトには「全てのアメリカ人の市民権と自由のために尽力する」ことを掲げる超党派の組織「不寛容と人種差別に反対する財団」へのリンクが貼られている。

この財団はウェブサイト上で、「アメリカでは、大学や企業、政府やメディア、さらには子どもたちの通う学校に至るまでの各種機関が、ひねくれた、不寛容な原理主義を押しつけるようになりつつある。この原理主義は私たちに、お互いを肌の色やジェンダー、性的指向のような、変更不可能な特徴に基づいて評価するよう求めるものだ」と主張。「そういう考え方は対立を生み、人間であることの意味を損なわせる」と続けている。

学術誌に発表の論文が人種差別を指摘

ドクター・スース作品の権利を管理している会社ドクター・スース・エンタープライズは3月2日、AP通信に対して、ドクター・スースの作品の一部に人種差別的な描写があるとして、出版を停止することに決めたことを明らかにした。

同社は声明の中で、「これらの本は有害かつ間違った方法で人々を描いている」と説明し、こう続けた。「今回の出版停止は、弊社として全てのコミュニティーや家族を支援する作品を提供していくための、より幅広い計画の一部にすぎない」

絶版が決まったのは、『マルベリーどおりのふしぎなできごと』、『ぼくがサーカスやったなら』、『McElligot's Pool』、『On Beyond Zebra!』、『おばけたまごのいりたまご』と『The Cat's Quizzer』の6作品。2日はアメリカで「読書の日」に制定されており、またスースの誕生日でもある。

ドクター・スースは本名をセオドア・スース・ガイゼルといい、最も有名な絵本作家のひとりだ。『キャット・イン・ザ・ハットーぼうしをかぶったへんなねこ』、『緑のたまごとハム』や『グリンチ』などの人気作品は、今も世界で読み継がれている。

だが2019年に学術誌「青少年文学における多様性研究」に発表された論文が、スースの作品には人種差別的、反ユダヤ主義的な描写があると指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハリコフ攻撃、緩衝地帯の設定が目的 制圧計画せずと

ワールド

中国デジタル人民元、香港の商店でも使用可能に

ワールド

香港GDP、第1四半期は2.7%増 観光やイベント

ワールド

西側諸国、イスラエルに書簡 ガザでの国際法順守求め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中