最新記事

日本社会

日本の高学歴女性は未婚率が高いが、特にその傾向が強い地方は......

2021年3月10日(水)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

ちなみに<図1>の縦軸、すなわち大卒女性の結婚のしにくさは、各県の女子の大学進学率と相関している。どういう傾向かは察しがつくだろう。<図2>は、昨年春の女子の4年制大学進学率(18歳人口ベース、浪人込み)との相関図だ。

data210310-chart02.png

横軸は、大学・大学院卒女性の未婚率が全女性より何ポイント高いかだ(30~40代)。高学歴女性の結婚のしにくさの指標だが、この数値が高い都道府県ほど女子の大学進学率が低い傾向がみられる(相関係数は-0.648)。

右下は大卒女性の未婚率が相対的に高く、かつ18歳女子の大学進学率が低い県だが、福岡を除く九州の県が見事に固まっている。横軸は10年以上前のデータでタイムラグがあるが、偶然にしてはできすぎている。

地域のクライメイトを意識し、女子生徒の進路展望から大学進学が外れているとしたら問題と言えるだろう。2015年だったか、鹿児島県の知事が「三角関数を女子に教えて何になる」と発言して猛バッシングを浴びた。5年以上経った今、地域のトップの意識が変わっていることを願うばかりだ。

「高学歴Uターン女子が田舎で経験した男尊女卑」(デイリー新潮、2021年1月12日)という記事の結語にて、次のように言われている。「なぜ若者が東京や大阪に出たっきり帰らないか、(地方では)女は子どもを産む道具だくらいに考えている経営者がたくさんいるからですよ」。ここで出したデータの背景が垣間見られる。

女子、とりわけ高学歴女子のUターンを阻んでいるのは、仕事がないという事情だけではなく、地域の偏狭な文化である可能性も否定できない。それが地域の存続を脅かしていることは言うまでもない。

<資料:総務省『国勢調査』(2010年)
    文科省『学校基本調査』(2020年度)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英シェル株主は気候対策強化案に反対を、グラスルイス

ワールド

中国主席、5年ぶり訪欧開始 中仏関係「国際社会のモ

ワールド

ガザ休戦交渉難航、ハマス代表団がカイロ離れる 7日

ワールド

米、イスラエルへ弾薬供与停止 戦闘開始後初=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中