最新記事

インド

インド、二重変異株の猛威で1日に感染34万人「医療は崩壊した」

2021年4月27日(火)17時30分
青葉やまと

インド政府は酸素不足を解消すべく、病院など国内551ヶ所に酸素工場を新設する資金を原則として承認した。さらに、空になった低温輸送車を大型輸送機で空輸し、国内流通の改善を図っている。政府は港湾に対し、酸素関連製品の関税を免除し、最優先で輸入手続きを進めるよう指示した。

タイムズ・オブ・インディア紙の報道によると、工業用酸素の転用などにより供給量は一部改善しているものの、依然として厳しい状況が続く見通しだ。インド政府はすでに、製薬など限られた業種を除き、工業用酸素の供給を大幅に制限している。

現地病院では酸素のみならず、ベッド、医薬品、ワクチンなどあらゆる資材が足りていない。ムンバイの病院に勤めるある医師はガーディアン紙に対し、「医療システム全体が崩壊しており、医師たちは疲弊しきっている」と語った。

医師の病院ではコロナ用に病棟を用意したが病床数は圧倒的に足りず、通路と地下も患者で埋まっており、さらに救急車で車椅子でと人々は絶え間なく担ぎ込まれる。だが酸素さえなく、医師は「私たちに他に何ができるのか」と戸惑いを隠さない。

強力な感染力を持つ二重変異株が後押しか

インド国内では3月に大規模な宗教行事と選挙キャンペーンが実施されおり、感染拡大が憂慮されていた。これとは別に、インド国内では「B.1.617」と呼ばれるいわゆる二重変異株の確認例が増えており、感染爆発の契機になった可能性がある。

ブルームバーグは、このウイルス株は感染力が通常よりも約20%強く、さらに、抗体の免疫作用を50%以上低下させるとしている。

カタールのアルジャジーラは「インド政府はまだ確認していないものの、ゲノム解読の結果は、この(二重変異)株が(感染爆発の)元凶である可能性を示唆している」と報じている。1月にはほとんど見られなかった二重変異株が4月にはインドでの症例の52%を占めるようになっており、この動きとも一致する。

インドの医療研究者もブルームバーグに対し、再生産数をシミュレートした結果、「再生算数の大幅な増加は、これらの変異によって説明できると我々は考えています」とコメントしている。ただし、原因を断定するにはゲノム解析の実施数を現在の5倍程度にまで増やす必要があり、確定には時間を要するものと見られる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

頼清徳氏、台湾新総統に就任

ビジネス

米ゴールドマン、PEと資産運用会社への貸し出しを強

ワールド

英総選挙、野党労働党のリードが18ポイントに拡大=

ビジネス

大和証G、26年度経常益目標2400億円以上 30
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中