最新記事

変異株

半数がワクチン接種済みのミシガン州も、変異ウイルスで感染爆発

Michigan Hospitals Are Preparing For Latest COVID Spike to Be Worse Than April 2020

2021年4月14日(水)21時07分
キャサリン・ファン

患者の数は1年前の最悪期に逆戻り。違いは「年齢が数十歳若い」こと ABCNEWS/YouTube

<ワクチンの大量配布でコロナ危機を制したかと思われたアメリカで、時計を1年前の最悪期に戻す勢いの感染爆発が始まった。その陰には日本でも拡大する「N501Y」が>

ミシガン州の病院は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まって以来最大の感染者増加と医療崩壊の危機に直面している。医療システムが崩壊寸前に陥った2020年4月よりも、状況は悪くなりそうだ。既に人口の4割がワクチン接種を済ませているミシガンで何が起こっているのか。

「今回の急激な感染拡大は、非常に深刻な事態といえる。感染者が最も多かった2020年4月に近づいている」と、ボーモント病院トロイ救急センターを率いるデービッド・ドナルドソン医師は本誌に語った。

「1年前より患者が増えると思うし、そうなれば、医療システムにとって本当に厳しい状況になる」と、ミシガン大学内科教授のビカス・パレク医師も言う。

同州保健福祉省の報告によれば、4月13日に新型コロナウイルス感染症で入院した成人の数は4011人。これまでで患者数が最も多かったのは、2020年4月8日の4365人だ。

ミシガン州の今回の感染拡大が以前と大きく異なるのは、イギリスの一部でロ感染爆発を起こした最も憂慮すべき変異株「B.1.1.7」に感染した患者が多数を占めていることだ。

「残念ながら、ミシガン州は現在、新型コロナに関連する多くの点で国内最悪の状況にある。その1つはB.1.1.7の拡大だ」と、ミシガン州西部の非営利医療ヘルスケア組織スペクトラムヘルスの感染症専門医リアム・サリバンは本誌に語った。

変異N501Yの悪夢

B.1.1.7 (別名VOC-202012/01) はこれまで発見されているコロナウイルスのどの株よりも、感染力が強いことがわかっている(B.1.1.7は23もの変異をもち、なかでも最も人体に影響が大きいと思われる変異の一つがいま話題の「N501Y」だ)。

ミシガン州ではすでに人口の41%以上にあたる338万人以上がワクチン接種を受けているが、多くの若者はまだ未接種で、感染しやすい立場に置かれている。それによって、サリバンいわく「最悪の事態」が起きた。

自粛疲れから警戒を緩め、ワクチン頼みで油断したところを、この変異株にしてやられた、とサリバンは言う。

ミシガン州の入院者数は既に2020年4月の水準に達した。違いは、ベッドに横たわる患者が1年前の患者より数十歳も若いということだ。

「重症の若い患者がはるかに増えた。ICUに入る患者の平均年齢も、冬の時点より若い」と、パレクは語った。

入院する子供の数も4月12日は49人を数え、過去最高となった。

もっとも、ミシガン州で若い入院患者の割合が増えているのは、死亡リスクの高い高齢者から接種してきたワクチンが機能している証拠でもあると、病院関係者は言う。

「最近確認したところ、患者の平均年齢は約56歳だった」と、ドナルドソンは言う。「ワクチンを接種した高齢の世代は守られている、つまりワクチンは効いているということだ」

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=まちまち、FOMC受け

ビジネス

ドル一時153.00円まで4円超下落、現在154円

ビジネス

FRB、金利据え置き インフレ巡る「進展の欠如」指

ビジネス

NY外為市場=ドル一時153円台に急落、介入観測が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 9

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中