最新記事

人種差別

重大な変化の時?黒人男性死亡事件で警官に有罪判決

Joe Biden Says Derek Chauvin Verdict Can Prompt 'Moment of Significant Change' for U.S.

2021年4月21日(水)20時59分
エリザベス・クリスプ
黒人男性を死亡させた元警官に対する有罪評決を祝うデモ隊

黒人男性を死亡させた元警官に対する有罪評決を祝うデモ隊(4月20日、ニューヨーク)Jeenah Moon-REUTERS

<黒人男性を死亡させた元警官に有罪評決が出た直後、バイデンは遺族に連絡をとり、国民に人種差別解消に向けた決意と警察改革を訴えた>

黒人男性ジョージ・フロイドを逮捕する際、首を膝で圧迫して死亡させたデレク・ショービン元警官に殺人を含む3件の有罪評決が出たこと受けて、ジョー・バイデン大統領は国民向けに演説を行い、フロイドの事件に抗議する昨年夏の全国的なデモを公民権運動と比較し、議会に全面的な警察組織の改革を迫った。

「あれは白昼堂々行われた殺人だった。全世界がアメリカ全土に蔓延する人種差別を目の当りにした」と、バイデンは有罪の評決が発表された後、国民に語った。「今夜、この国は一体となるべきだ。アメリカ人として、われわれは決してアメリカを憎悪の安全な隠れ家にしてはならない」

米議会では連邦警察改革の包括法案が審議されている。すでに下院は通過した法案だが、民主共和両党の勢力が拮抗している上院での通過には困難が伴うとみられている。

2020年5月25日に警官に取り押さえられて死亡したフロイドにちなんで「ジョージ・フロイド警察活動の正義法案」と呼ばれるこの法案は、司法省と州司法長官の警察に対する監督権を強化し、身体や車につけたカメラによる現場の撮影を義務づけ、容疑者の制圧に首を絞めることや、予告なしの家宅捜索を禁じる。

「この評決は大きな変化のきっかけになりうる」と、バイデンは、ほぼ10分間の大統領演説を締めくくった。大統領が個別の刑事事件の有罪判決についてこれほど長く語ることはめったにない。

遺族と支持者に電話

この事件の一部始終は、現場に居合わせた人が撮影した動画で明らかになっている。そこにはショービンがフロイドの首を膝で9分以上押さえつけ、路上で死に至らしめた様子が記録されていた。この動画はソーシャルメディアを通じて広く拡散され、昨年の夏に全米各地で抗議デモが起きた。さらに2週間にわたる裁判でも、動画の内容が何度も明確かつ詳細に示された。

ショービンは第2級殺人、第3級殺人、第2級過失致死で告発され、3つの罪状すべてで有罪と判断された。

バイデンとカマラ・ハリス副大統領は、ホワイトハウスのプライベートダイニングルームでスタッフと評決のニュースを見た。その後、バイデンはミネソタ州知事ティム・ウォルツに電話をかけた。

バイデンとハリス、ファーストレディーのジル・バイデンは、ホワイトハウスからジョージ・フロイドの兄フィロニスに電話をかけ、裁判所の廊下に集まったジョージ・フロイドの支援者はそのやりとりをスピーカーフォンで聞いた。

「あなた方にぜひお会いしたい」と、バイデンは電話で語り、フロイドの名がつけられた警察改革法案の成立を誓った。「われわれはもっと多くのことをやりとげるだろう」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正(17日配信記事)-日本株、なお魅力的な投資対

ワールド

G7外相会議、ウクライナ問題協議へ ボレル氏「EU

ワールド

名門ケネディ家の多数がバイデン氏支持表明へ、無所属

ビジネス

中国人民銀には追加策の余地、弱い信用需要に対処必要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 3

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 4

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 5

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 6

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 7

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 8

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中