最新記事

中国

G7「一帯一路」対抗策は中国に痛手か(その2)対アフリカ中国債務はわずか20%

2021年6月19日(土)14時16分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
英コーンウォールでのG7首脳会談後、記者会見するバイデン大統領(6月13日)

英コーンウォールでのG7首脳会談後、記者会見するバイデン大統領(6月13日) Kevin Lamarque-REUTERS

世界銀行やジュビリーなどのデータによれば、対アフリカ債務の20%しか中国は占めていない。20%で開発途上国を掌握しているとすれば、G7には何ができるのか?その資金は誰が出すのか?(本稿は「その1」の続きである。)

G7首脳会談コミュニケで触れているアフリカ

6月13日に発表されたG7首脳会談コミュニケ冒頭には以下の文章がある(全文和訳は外務省のHP )。

――世界中で他国・地域との我々のパートナーシップを強化する。我々は、クリーンかつグリーンな成長のためのイニシアティブを通じたものを含め、インフラ投資への我々のアプローチの段階的な変化を通じ、世界のより良い回復のための新たなパートナーシップを発展させる。我々は、世界合計で1,000億ドルという野心に達するとの我々の目標を支えるため、最もニーズのある国に対する国際通貨基金(IMF)からの支援を増強させることを含め、アフリカとの新たなディールに向けて、我々の現在のパートナーシップを深化させることを決意する

この文章は6月16日のコラム<G7「対中包囲網」で賛否両論、一時ネットを遮断>に書いたように「妥協の産物」なので何とも分かりにくい。そこで、これまでのバイデン大統領の発言などから「分かりやすい日本語」に翻訳すると、以下のようになる。

――米中の覇権争いは、民主主義国家と専制主義国家の間の闘いである。専制主義国家に打ち勝つためには民主主義国家が団結しなければならない。専制主義国家の代表である中国は、巨大経済圏「一帯一路」構想により貧困国(極貧国)を含めた発展途上国を、不透明な債務による債務漬けという手法で掌握しているので、G7諸国は一致団結して透明な(クリーンな)方法で貧困国や発展途上国が多いアフリカなどに投資して、新しいネットワークを創らなければならない(=「一帯一路」に対抗しなければならない)。そのためには、たとえばIMFなどを通して1,000億ドルほどを集めて、アフリカの貧困国や発展途上国に投資しすることを決意する(=中国に代わって民主主義諸国が掌握する=中国を追い出すことを決意する)。

といったことを言っているのだと考えると、話が呑み込みやすい。

アフリカにおける債務の現状

ではそのアフリカにおける債務の状況はどうなっているかを、世界銀行やジュビリー債務キャンペーン(Jubilee 2000運動の起点となったイギリスの国別組織の後身で、最貧国の債務帳消しを求めて1990年から世界的に広がった社会運動)(以下、ジュビリーと略称)などのデータから考察してみよう。

中国のデータを用いると、特に債務に関しては(私を含めた)多くの人が「信じられない」という拒否反応を持つであろうことは分かっているので、敢えて世界銀行とジュビリーのデータを用いる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=上昇、ナスダック最高値 CPIに注目

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、PPIはインフレ高止まりを

ビジネス

米アマゾンの稼ぎ頭AWSトップが退任へ

ビジネス

ソニー、米パラマウント買収を「再考」か=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中