最新記事

国際情勢

モーリー・ロバートソンが斬る日本メディアと国際情勢

Develop a Global Mindset

2021年7月22日(木)11時35分
モーリー・ロバートソン

210706P18adventtr_MRI_02.jpg

PHOTO ILLUSTRATION BY ADVENTTR/ISTOCK

オリンピックについて疑義を呈すると政府の反感を買うので、メディア各社は超忖度していますよ。このことを最近は身をもってビリビリ感じています。それで何が起こるかというと、例えば「首相はこう言いました」と報じるだけになる。「でもそれ『しか』言わなかったよね」という食い込みがない。同じ内容のリークに対しても日本メディアと国外とではパンチが全然違います。

日本メディアはニュースの根底にある問題をあまり取り上げないですね。五輪以前からこの体質はありました。数年前、アイドルグループAKB48のメンバーの恋愛が発覚して、反省の印として頭を坊主にするという、ほとんど見せしめのハラスメントのようなことが起きました。この件の本当の問題は、AKBのシステムに搾取的なものがあり、このビジネスモデルを存続していいのかということだったはずです。欧米メディアはそこを突く報道をしていました。

それに対して、例えば日本のテレビは国際情勢をセンセーショナルに報じたいし、どうせ日本人は理解できないし興味もないだろう、と高をくくっている部分も制作側にある。また世界観が古く、世界で何が起きているのかも分かっていない。女性へのセクハラや性的暴行に声を上げる#MeToo運動の世界的広がりをリアルタイムで報じたメディアは日本ではハフポストなどごく少数ではなかったでしょうか。

では読者としてはどうすればいいか。やはり英語でニュースを読むことです。SNS上で英語ニュースを翻訳している人もいますが、なかには陰謀論的なアカウントもあり、見分けづらいです。例えばBLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動は極左集団アンティファが仕掛けたテロだというデマを昨年、日本でも多くの人が信じてしまった。

僕がルーティン的にチェックしている海外メディアは、世界的に大きな話題については、ガーディアン、ニューヨーク・タイムズ、BBC、ワシントン・ポストなどです。より深い分析だとフォーリン・ポリシーやディプロマット誌ですね。紙の雑誌だとニューズウィーク日本版ですが(笑)、タイム誌も読みます。

細切れ報道から文脈を読む

英語で読むとよりニュースの背景が分かるようになりますが、本当にいい情報はだいたい有料。だから基本的にネットで課金のものをチェックしています。テレビは見ないです。結局文字のほうがよくまとまっているな、と思うので。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日揮HD、24年3月期は一転最終赤字に 海外事業で

ビジネス

独VWの第1四半期、営業利益が20%減 年間目標は

ビジネス

米テスラ、上級幹部を削減 追加レイオフも実施=ニュ

ビジネス

訂正-日経平均は続伸、米株高を好感 決算手掛かりに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中