最新記事

ヘルス

「一度壊れると元には戻らない」 コロナに打ち勝つ免疫力にも関わる『最重要臓器』とは

2021年8月1日(日)09時12分
小林弘幸(順天堂大学医学部教授) *PRESIDENT Onlineからの転載

reuter_20210730_215629.jpg

出典=小林 弘幸、末武 信宏(監修)『最高の体調を引き出す 超肺活』(アスコム)


しかし、肺胞が壊れるなど肺が弱っていると、肺胞から取り込める酸素量が減ります。これを脳は酸素を運ぶ血液が不足していると認識し、心臓にもっと血液を送るように命じます。すると、心臓や血管に負担がかかり、肺以外の部位に疾患が発生してしまう危険性があります。

つまり肺は、単に酸素と二酸化炭素を交換するだけの場所ではなく、心臓や全身の血管の健康とも深く関わっているということです。

これまで多くの方が残念ながら肺の状態に無関心でした。じつは肺は20代から衰え始め、とくに喫煙者は40代になると急速に機能低下が進行します。そして残念ながら、重要な役割を果たしている肺胞は、一度壊れるともとには戻らないのです。

年間9万5000人が肺炎で命を落としている現実

肺の機能が衰えると、私たちにどんな不調が降りかかってくるのでしょうか。

真っ先にダメージを受けるのが、免疫システムです。健康な人の呼吸器には、体に有害な物質から体を守る防御システムが備わっています。

「綿毛」は1分間に1000回を超える速さで動いており、気管内部を覆っている粘膜層を動かします。この働きによって、ウイルスなどの病原体が侵入してきても、粘膜層が捕獲し、捕らえられた病原体は咳とともに口に戻され、食道に飲み込まれる仕組みがあります。

ほかにも肺胞の表面に待機する免疫細胞による迎撃や、血液中を巡回している別の免疫細胞を呼び寄せ、徒労を組んで病原体を撃退する免疫システムも肺は備えています。

これらの免疫システムが肺の衰えによって機能しなくなると、感染症が重症化する危険性が出てきます。

また、肺の病気といえば代表的なのは肺炎ですが、じつは年間約9万5000人もの方が、肺炎によって命を落としてしまっていることをご存知でしょうか?

肺炎とは、気管支や肺に炎症を起こし、肺の病態が著しく低下した状態を指します。ウイルスが原因によるものや、肺胞を包んでいる間質という組織が炎症を起こして発症するものなど、肺炎と一口で言っても原因は様々です。

呼吸筋を鍛える"肺トレ"

このなかで、最近注目されているのが間質性肺炎という病気です。

間質性肺炎はウイルス感染などの急性の場合をのぞき、1年以上の時間をかけてゆっくりと進行していきます。

はじめは階段や坂道をのぼるときに息切れする程度ですが、病気が進行すると服を脱いだり、入浴したりといった日常動作で、痛みを伴う咳が出るようになります。

そしてそのまま放置しておくとやがて重篤化し、命を落とすケースが非常に多いです。

では、肺の機能の衰えは、あきらめるしかないのでしょうか?

答えは、否です。

肺の機能は何歳になっても高めることができます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入有無コメントせず 過度な変動「看過

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中