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「ナチュラルすぎる自撮り」で人気者のゴリラ、親友の腕の中で息を引き取る

2021年10月8日(金)19時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
自撮りに写り込むマウンテンゴリラ

ンダカシを一躍有名にした写真(2019年) Mathieu Shamavu for www.virunga.org via REUTERS

<ソーシャルメディアを通じて世界中で愛されたマウンテンゴリラ「ンダカシ」と、支え続けた飼育員の友情>

飼育員の自撮りに直立状態で写り込み、ネット上を賑わせたメスのマウンテンゴリラ「ンダカシ」が、長期にわたる闘病の末、9月26日の夜に死亡した。

ヴィルンガ国立公園(コンゴ民主共和国)のプレスリリースによると、このゴリラは、世話人、そして友人でもあるアンドレ・バウマの腕の中で息を引き取ったという。

「このような愛すべき生き物を支え、世話することができて幸せだった。特にンダカシが幼い頃、どんなトラウマを受けたかを知っていたから」

ンダカシは2007年、生後2カ月で公園に連れてこられた。同国東部にある国立公園のレンジャーが、武装した民兵に銃殺された母親の体にしがみついているのを発見した。

このゴリラはゴマのレスキューセンターに運ばれ、そこで初めてバウマと出会った。彼は一晩中ゴリラを抱きしめ、ぬくもりを分け与えた。

一命は取り留めたものの、家族を失ったトラウマと長いリハビリ期間による脆弱性のため、野生に戻ることはできないと公園側は判断。2009年に設立されたヴィルンガ国立公園のセンクウェクウェ・センターへと移された。

同センターは、ンダカシのように孤児となったマウンテンゴリラを保護する施設だ。密猟など、人間の行為によって何らかの被害を受けたゴリラのケアとリハビリが行われている。

公園での11年間の生活は、いくつかのテレビ番組や映画で取り上げられた。人々はンダカシの温かく遊び心のある性格を知ることになったが、一躍彼女をインターネット上のスターダムに押し上げたのは、2019年に公開された自撮り写真だった。

撮影するバウマの後ろで2本足で立つンダカシと、一緒に公園に到着したンデゼがカメラに視線を向けている。

ンダカシの影響力はソーシャルメディア上だけにとどまらなかった。ヴィルンガ国立公園内の治安を守るべく、コンゴ当局は大規模な改革に乗り出したのだ。

その効果もあって、マウンテンゴリラの生息数は2007年の720頭から47%増加し、21年には推定1063頭とされている。

「ンダカシがいなくなることは、ヴィルンガの私たち全員にとって寂しいこと。でもセンクウェクウェで過ごした時間のなかで彼女がもたらしてくれた豊かさに、私たちは永遠に感謝している」

バウマはそう締めくくった。

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