最新記事

中東

アメリカからの武器購入を中断したUAEに中国の影

UAE Halts Discussion on $23B Purchase of Planes, Drones from U.S.

2021年12月16日(木)15時12分
ローラ・コーパー
F35ライトニング2

テスト飛行中のF35ライトニング2(2012年8月8日) REUTERS/Andy Wolfe/Lockheed Martin

<対テロ戦争の協力者だったUAEだが、今月初めには、アブダビ港で建設が進められていた中国の施設が軍事基地にあたるというアメリカの抗議で建設中止になった経緯も>

アラブ首長国連邦(UAE)は12月15日、アメリカから武器を購入する計画を凍結すると発表した。総額230億ドルにのぼる取引の対象には、次世代戦闘機「F35ライトニング2」、高性能武装ドローン、空対空および空対地ミサイルが含まれていた。

在ワシントンUAE大使館は、米国防総省との間で予定されているそのほかの問題についての協議は予定どおり進めていくつもりだが、武器売却については「協議を中断」したいと表明した。UAEの複数の当局者はその理由として、戦闘機使用の場所や方法について、アメリカ側が制限を設けてきたことを挙げ、UAE側としてはこれが主権の侵害にあたると考えていると述べた。

米国防総省のジョン・カービー報道官はこれらの要件について、「UAEだけに求めている条件ではなく、交渉の余地はない」と述べた。

この問題に詳しい人物(匿名)がAP通信に語ったところによれば、UAEがアメリカ側に協議中断の意向を伝えた手紙が下級官僚によって書かれたものであったことから、アメリカ側は、協議の中断はUAE側の交渉戦術だと考えているという。

トランプが約束していた武器売却

米国務省とUAE大使館はいずれも、協議再開の余地はあるとしている。同大使館は声明の中で、「アメリカはUAEにとって今後も、高度防衛装備品の優先供給国であり、F35に関する協議を将来的に再開する可能性はある」と述べた。

UAEにF35戦闘機50機を売却する計画は、ドナルド・トランプ前米政権の終盤に浮上していた。UAEがイスラエルとの国交正常化に合意したことに基づいて、合意されたものだ。その後発足したジョー・バイデン米政権は、この売却計画について、見直しのための一時凍結を決定。UAEとサウジアラビアがイエメンにおける代理戦争によって世界最悪の人道危機を引き起こしていることへの批判が一因だった。取引の対象には、高性能武装ドローン18機や、空対空および空対地ミサイルも含まれていた。

米国務省は声明の中で、バイデン政権は「今後も売却計画に注力していく考えだ。その一方で、武器が引き渡される前や途中の段階、および引き渡し後のUAE側の責務や行動について、明確な相互理解が得られるように、引き続き協議を続けていく」と説明。カービーは、「アメリカとUAEのパートナーシップは、1件の武器売却計画よりもずっと戦略的かつ複雑なものだ」と述べた。

協議中断について、最初に報じたのはウォール・ストリート・ジャーナル紙だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

訂正-ポーランドのトゥスク首相脅迫か、Xに投稿 当

ビジネス

午前の日経平均は反落、前日の反動や米株安で

ビジネス

中国新築住宅価格、4月は前月比-0.6% 9年超ぶ

ワールド

北朝鮮技術者が身元偽り米企業でリモート勤務、支援の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中