最新記事

ロシア

女子バスケのアメリカ代表選手、ロシアで拘束。身を案ずる署名3万件超

Brittney Griner Petition Receives 30k Signatures Urging WNBA Star Be Rescued From Russia

2022年3月9日(水)17時49分
エマ・ノーラン

グライナーは昨年の東京2020オリンピックでも女子アメリカ代表として金メダルを獲得した  Phil Noble- REUTERS

<オリンピックで2度金メダルを獲得した女子バスケットボールのスター選手が麻薬密輸の容疑でロシアに拘留され、アメリカでは身の安全を懸念する声があがっている>

ロシアのウクライナ侵攻をめぐって米ロ関係の緊張が高まるなか、アメリカのプロバスケットボール選手が麻薬密輸の容疑でロシア当局に拘束されていることが判明した。

ニューヨークタイムズ紙は3月5日、アメリカのWNBA(女子プロバスケットボール協会)に所属するブリトニー・グライナー(31)が、モスクワ近郊のシェレメーチエボ空港で2月に拘束されていたことを報じた。逮捕の日時は特定されていない。

ロシア税関当局の発表によれば、同空港に到着したグライナーの手荷物のなかから、蒸気吸入器と大麻オイル(ハシシュオイル)が発見されたという。ハッシュオイルとは、精神作用成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)が高濃度に含まれた濃縮マリファナのことだ。

グライナーに対しては現在、違法薬物の「密輸」の容疑で捜査が行われており、有罪となれば10年以下の懲役に処せられる可能性がある。

CNNによれば、ロシア税関当局の密輸対策本部のイリーナ・ベギシェワは国営チャンネル「ロシア24」でこう語った。「相当量の麻薬の密輸のため、ロシア法229条2項により、アメリカ市民が刑事訴追されている」

グライナーは2016年のリオデジャネイロ五輪と2020年の東京五輪にアメリカ代表として出場、金メダルを獲得している。

3万人以上が署名

署名サイトチェンジ・ザ・ドット・オルグでは、グライナー選手のロシアからの迅速かつ安全な帰国を求める署名が行われ、すでに3万人以上が参加した。

署名を呼び掛けたのはWNBAを専門とするジャーナリストで活動家のタムリン・スプライル。署名の数は現時点で3万978人分に達している。

スプライルは支持者に、「ブリトニー・グライナーが安全かつ迅速にアメリカに帰ってこられるように、アメリカの議員たちに呼びかけよう」と促している。

「グライナーは、WNBA参加以来、他人を助けるために自分の力を使ってきた、みんなに愛されている地球市民です」と、スプライルは署名の請願で説明した。

「グライナーがロシアにいたのは仕事のためだった。UMMCエカテリンブルクでプレーし、2021年には、ユーロリーグ女子における同チームの5度目の優勝に貢献した」

スプライルは、アメリカの女子プロバスケットボール選手の多くが、オフシーズンに海外で活動していることを説明した。

「グライナーはWNBAのオフシーズンには海外でプレーしている。WNBAに所属する多くの選手がそうしている。アメリカ以外の国のほうが、報酬が格段に高いからだ」

「男子のNBA(全米バスケットボール協会)の新人はまだプロの試合に出場していない段階でも、オールスターに選ばれたWNBAのベテラン選手が望む何倍もの報酬を得ている」と、嘆願には書かれている。

「この現実は、選手のせいではない。女子選手は単に男子と同じように自分の価値に見合った報酬を得たいと考えているだけであり、だから地政学的な混乱に巻き込まれても仕方がないとはいえない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

円安、輸入価格上昇通じて実質所得下げる影響=植田日

ビジネス

原油価格や為替の今後の動きを注視と植田日銀総裁、実

ビジネス

午前の日経平均は反発、前日安の反動 個別物色が活発

ワールド

タイ首相、大麻を年内に規制薬物指定する方針表明 解
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中