最新記事

タイ

木一本で成り立つ小島に観光客が群がりピンチ! 「自撮り」自粛を タイ

2022年6月23日(木)17時38分
佐藤太郎

カイ・フアロー島の名木に登る観光客 YouTube/TomoNews Indonesia

<地元当局は6月14日にカイ・フアロー島を調査した結果、木に登って自撮りする観光客のせいで、木がひどく傷んでいると発表した>

観光業復活は嬉しいものの...

観光大国として知られるタイは、2019年の国際観光収入で米国、スペイン、フランスに次ぐ605 億米ドル(約 6.6 兆円)を得ていた。対名目GDP比では11.1%と、タイ経済の観光業への依存度は他国に比べ突出している。(マカオは除外)

今年5月の海外からのタイ入国は1日2万人程度、年内に入国者数を月間100万人まで回復する見通しも出ている。年間で500万〜1500万人の外国人観光客受け入れを見込んでいると、5月6日にタイのタナコーン政府報道官が発表した。昨年の42万8000人からは大きな改善だ。

パンデミック前の2019年の4000万人を大きく下回るものの、観光産業は着実に息を吹き返しつつある。

しかし一方で、すでに問題が起きている。経済の要でもある観光産業の復活は喜ばしいことだが、タイ東部沿岸の小島が存続の危機に瀕している。

なりふり構わぬ観光客

同国東部トラート県の無人島「カイ・フアロー島」にある一本の木が傷付けられている。いや、すでに何本か枝が折れて根は何度も踏みつけられた跡があった。

カイ・フアロー島は幅が数メートル、木とその根っこだけが生息している。

関係者によると、この地域に一度に入れる観光客は5人だけ。しかし、Facebookで旅行者がこの場所がタイの人気漫画のあるシーンに似ていると発言したことから話題になり、ここ数ヶ月は押し寄せる観光客の振る舞いに悩まされている。

もちろん礼節をわきまえた観光客もいるが、珍しい木に登って自分の姿を記念に収めたい観光客たちの行いは酷すぎる。

地元当局は6月14日に検査した結果、観光客が無理に登って木を背景に自撮りするせいで、木がひどく傷んでいると発表した。

この小島を管理するLertrob Saithongpuは、「The Nation」に、この場所が観光スポットになる以前に比べ、木の幹が曲がってしまったと語った。

地元行政は、これ以上木が傷まないよう、島を訪れる観光客の数を制限したり、受け入れ期間を特定して設けるなど対策に乗り出すそうだ。保護キャンペーンを展開し観光客に向け意識の改善を訴える計画も控えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、1万件減の22.2万件 労働市

ビジネス

「ECB利下げ開始確実」とポルトガル中銀総裁、6月

ビジネス

ECBは利下げ急がず、6月以降は慎重に=ラトビア中

ビジネス

英中銀、利下げ待つべき 物価圧力の緩和確認まで=グ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 3

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない

  • 4

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 5

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 6

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 7

    2023年の北半球、過去2000年で最も暑い夏──温暖化が…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    仰向けで微動だにせず...食事にありつきたい「演技派…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中