最新記事

進化

「知性を持っていた?」もし恐竜が絶滅していなかったらどうなっていたのか

2022年11月28日(月)18時30分
松岡由希子

恐竜が絶滅せずに進化し、知性を持つようになっていたら...... PEDRE-iStock

<地球と小惑星との衝突が回避され、恐竜が生き残ったとしたら。知的生命体となった「恐竜人間(ディノサウロイド)」の可能性はあったのだろうか......>

6600万年前に恐竜が絶滅した原因として、隕石衝突説が有力視されている。小惑星が地球に衝突して大量の塵が発生し、これらが大気中に漂うことで空が暗くなり、植物が光合成をしなくなって激減。食物連鎖は崩壊し、やがて恐竜を含め、多くの動物が絶滅したと考えられている。

英バース大学のニコラス・ロングリッチ博士らの研究チームは、北米のK-Pg境界(約6550万年前の中生代白亜紀と新生代古第三紀との境界)における哺乳類の多様性を調査し、2016年5月に学術雑誌「ジャーナル・オブ・エボリューショナリーバイオロジー」でその研究成果を発表した。これによると、59種のうち生き残ったのはわずか4種で、93%の種が絶滅していたという。

「恐竜が絶滅せずに進化し、知性を持つようになっていたら」

それでは、地球と小惑星との衝突が回避され、恐竜が生き残ったとしたら、どうなっていただろうか。
1980年代、カナダの古生物学者デイル・ラッセル教授は「肉食恐竜が絶滅せずに進化し、道具を使える知性を持つようになっていたとしたら」という思考実験を行い、知的生命体となった「恐竜人間(ディノサウロイド)」を提唱した。

ラッセル教授の「ディノサウロイド」説に対し、ロングリッチ博士は、2022年11月24日付のニュースサイト「ザ・カンバセーション」の寄稿記事で、「生物の進化には一定の方向性がある」とする「定向進化」を根拠に、「『ディノサウロイド』は不可能ではないが、可能性は低い」との見解を示す。

ジュラ紀前期にはブロントサウルスが体長30メートル、体重30~50トンの大型に進化した。同様に、北米大陸に生息したディプロドクス、ローラシア大陸西部とゴンドワナ大陸の一部に分布したブラキオサウルス、中国大陸に生息したマメンチサウルス、インドに生息したティタノサウルら、複数の分類群で巨大化している。

これらに共通するのは竜脚類である点だ。ロングリッチ博士は「肺や中空骨、代謝など、竜脚類の解剖学的構造が進化への道をひらき、他に類を見ない方法で巨大化したのかもしれない」と考察している。

肉食恐竜も体長10メートル、重さ数トンへと進化を繰り返した。1億年かけて、メガロサウルス、アロサウルス、カルカロドントサウルス、ネオヴェナトル、そして史上最大級のティラノサウルスまで進化したのだ。

恐竜の脳はわずかに大きく進化していたかもしれないが......

恐竜は進化を繰り返して巨大化する一方、その脳は比較的小さなままであった。白亜紀後期に北米大陸で生息したティラノサウルスの脳はわずか400グラムだ。

ロングリッチ博士は「地球と小惑星の衝突がなかったら、長い首を持つ巨大な草食恐竜やティラノサウルスのような大型肉食恐竜がまだ生息していただろう」とする一方、「これらの恐竜の脳はわずかに大きく進化していたかもしれないが、知能が進化したことを示す証拠はほとんどない」と主張している。

historych20221128aa.jpg次のページ 動画:恐竜人間「ディノサウロイド」の可能性は?

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル小幅高、金利の動向見極める動き続

ビジネス

米国株式市場=小幅高、FRB当局者発言に注目

ワールド

バイデン氏の5月支持率、約2年ぶり低水準 経済問題

ビジネス

ユーロ圏のインフレ制御に「本当に自信」=ECB総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル写真」が拡散、高校生ばなれした「美しさ」だと話題に

  • 4

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 5

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の…

  • 6

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 7

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 8

    中国・ロシアのスパイとして法廷に立つ「愛国者」──…

  • 9

    「韓国は詐欺大国」の事情とは

  • 10

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中