最新記事

米銀破綻

金融危機を予測したルービニ教授が世界規模の危機を警告

U.S. bank collapse could spark global crisis: "Dr. Doom" Nouriel Roubini

2023年3月14日(火)17時59分
キャサリン・ファン

預金の全額保護を受けて店舗営業を再開、預金引き出しに応じるシリコンバレー銀行(3月13日) Brittany Hosea-Small-REUTERS

<シリコンバレー銀行の経営破綻は、「世界に波及する」恐れがあるとルービニは語る。ただし今回危ないのは大手銀行ではなく地方銀行や中小銀行だ>

米シリコンバレー銀行(SVB)の経営破たんは「世界に伝染する」危険がある――2008年の金融危機を予見し、「破滅博士」の異名を持つ米経済学者のヌリエル・ルービニは、こう警告している。

ルービニは3月13日、本誌の取材に対して「ヨーロッパに少なくとも1つ、歴史的に資本不足の問題を抱えてきた金融機関がある。この金融機関は、これまでに何度か資本注入を受け、不良債権を抱えている可能性や、証券の含み損を抱えている可能性がある」と述べ、さらにこう指摘した。

「もしもこの金融機関に何か問題が生じれば、もっとシステム的に重要な問題になるだろう。その資産規模はシリコンバレー銀行の4000億ドル程度とは異なり、何兆ドルにものぼるからだ」

ルービニが指摘するように、3月10日に経営破たんしたシリコンバレー銀行をめぐる混乱は、アメリカだけにとどまらない。13日、ヨーロッパの株式市場は大幅に下落し、銀行株は5.54%も値を下げた。この1年超で最大の下げ幅だ。前回、銀行株が大幅な下落を記録したのは、ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始した直後の2022年3月4日で、この時の下げ幅は6.66%だった。

シリコンバレー銀行の経営破たんは、金融機関の破たんとしては米国史上2番目の規模となる。カリフォルニア州サンタクララに本店を構える同銀行は、大規模な取り付け騒ぎの発生から48時間後の10日午前に閉鎖され、規制当局の管理下に置かれた。

危ないのは地銀

その2日後である12日には、ニューヨークに本店を構えるシグネチャー・バンクが、騒動の余波を受けて閉鎖された。そうしなければ金融システムの安定性が脅かされると、当局が判断したためだ。

13日、欧州主要企業600社で構成するストックス欧州600は2.34%下落。ドイツのDAX指数は3%、フランスのCAC40指数は2.9%、さらにイギリスのFTSE100指数は2.6%の下落を記録した。スイスに本社を置くクレディ・スイス銀行の株価は12%以上急落し、過去最安値を更新した。

バラク・オバマ政権時代にティモシー・ガイトナー国際担当財務次官(当時)の上級顧問を務めていたルービニは、これは「世界的な伝染によって生じる自然な流れ」だと指摘した。「今回の(シリコンバレーの)経営破たんとは何も関係がないにもかかわらず、ヨーロッパの株式市場でも株価が大幅に下落している理由はそこにある」

ルービニは、シリコンバレー銀行の経営破たんが今後、もっと大きな問題に発展していく可能性はあると指摘した上で、リスクにさらされているのはバンク・オブ・アメリカやJPモルガン・チェースのような大手銀行や銀行システム全体ではなく、主に小規模から中規模の銀行だと強調。経営破たんの可能性に直面しているのは、預金者が少なく、有価証券の含み損を多く抱え、資産を時価で売却すれば資本金が吹き飛んでしまうような地方銀行だと述べた。「取り付け騒ぎはまだ続く可能性がある。危機は終わっていない」と彼は指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノババックス、サノフィとコロナワクチンのライセンス

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中