コラム

「よい誤解」だから許される? 日本の「ハーフ観」はご都合主義だ

2021年04月09日(金)13時20分
周 来友(しゅう・らいゆう)
大坂なおみ

大坂なおみ選手に対する日本社会の反応には驚いた DANIELLE PARHIZKARAN-USA TODAY SPORTS-REUTERS

<根拠もなく「ハーフの女性は美人」「ハーフはバイリンガル」......。さらには、日本人扱いする場合と、日本人ではないかのように距離を置く場合がある>

私は自分のYouTube番組にさまざまなゲストを呼んで話を聞いている。元受刑者にAV女優、在日ブラジル人漫画家、台湾人の元スパイ......。最近出演してもらったのは、ドイツと日本の「ハーフ」であるサンドラ・ヘフェリンさんだ。

サンドラさんとはもう20年以上の付き合いになる。外国人が出演するバラエティー系の討論番組で共演したのがきっかけで親しくなった。

彼女はいま日本で作家として活躍しており、最新作のタイトルは『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』。YouTubeで対談した際には、テレビ業界で言うところの「番宣」として、この著書について紹介した(サンドラさん、ニューズウィークでも紹介しましたよ!)。

文化比較のエキスパートである彼女との対談のテーマは「ハーフ」だ。日本でも今や国際結婚は珍しいものではなくなった。私自身、妻は日本人で、4人いる子供はいわゆる「ハーフ」である。

私の住む新宿区は特に外国籍住民が多く、人口の約11%が外国人だ(2021年3月現在)。子供の同級生にも、親のどちらかが外国人という子が少なくない。

とはいえ、日本社会で外国人や「ハーフ」についての理解が以前より深まったかと言えば、残念ながらそうとは言えない。

例えば、根拠もなく「ハーフの女性は美人」と思っている人は意外と多いのではないだろうか。サンドラさんも以前、合コンに参加したとき、ドイツと日本の「ハーフ」の子が来ると聞かされていた男性陣にがっかりされた経験があるという。

「え、ハーフっていうより完全に外人だよね」と言われたらしい。外国人より「ハーフ」は上なのだ、たぶん......。

語学に対する思い込みもある。バイリンガルで当たり前と思われがちだが、1カ国語しか話せない「ハーフ」は少なくないし、実際、英語を話せないことをネタにしている見た目は黒人の「ハーフ芸人」もいるぐらいだ。

サンドラさんによれば、母国語が2つあるというのも理解されにくいらしく、日本語とドイツ語の両方が母国語だと伝えても、どちらのほうがよりうまいのかとしつこく聞かれるのだという。

「よい誤解」なのだからそう目くじらを立てなくても......と考える人もいるかもしれない。しかし、実際には「ハーフ」だからといって優越感に浸れるわけでもなく、それどころか逆にいじめの対象になってしまう場合もある。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

バランスシート圧縮減速、市場のストレスを軽減=米N

ビジネス

世界最大級のCO2回収・貯留施設稼働、アイスランド

ビジネス

中国杭州市、住宅規制を撤廃 ハイテク企業の人材増で

ビジネス

米GM、「シボレー・マリブ」生産終了へ EVに注力
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story