「いらない」と「楽しい」が同居する五輪は、「国威発揚」より意義深い
「つまらない」「迷惑だ」とはっきり言える五輪。一方で、好きな人は競技そのものを雑念なしに楽しめる五輪。こうした五輪であれば、金メダルが何個であろうと、開幕式が盛大であろうとなかろうと、国の名誉も威信も関係ない。コロナ渦の五輪は、そうした新しい五輪の形を示すきっかけになるかもしれない。
もっとも、古くさい「国威発揚型の五輪観」は、今回の東京五輪でも見え隠れはする。しばらく前には安倍晋三前首相が「反日的な人が五輪開催に強く反対している」と月刊誌の対談で述べた。
個人的に東京五輪開催には意義があると考えているが、その1つが、日本の市民の反対運動によって五輪の意味を世界に改めて問い直したことだ。それを「反日的だ」とくくってしまえば、今後も繰り返される可能性のある感染症下の五輪という重い課題に、悩みながらぶつかった全ての関係者の努力の価値も低めてしまう。
やはり日本は政治指導者よりも、市民社会のほうが時代の一歩先を行っている。
李 娜兀
NAOHL LEE
国際交流コーディネーター・通訳。ソウル生まれ。幼少期をアメリカで過ごす。韓国外国語大学卒、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得(政治学専攻)。大学で国際交流に携わる。2人の子供の母。
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