コラム

15分で我慢の限界に...じっと座るのが苦手な外国人の「座禅」体験

2021年12月02日(木)11時44分
トニー・ラズロ
座禅

SAND555/ISTOCK

<座禅体験を取材したアメリカ人の筆者が感じた座禅の難しさ。日本の高齢者を含め、座禅が苦手な人の姿勢をお釈迦様はどう考えていた?>

ある店の「心まで自粛するな」という看板が目に入った。心の自粛か......。パンデミックが続くなか、自分の心の健康はどうなっているだろう。

お釈迦様が悟りを開いた12月8日は「成道会(じょうどうえ)」と呼ばれる。その日が近づいていることを意識していたためか、「心の健康」という言葉が頭の中でしばらく響いた。2600年前にインドで起きた出来事と僕にどんな縁がある? まあ、少しくらいスピリチュアルな一面があってもいいよね。「郷に入っては郷に従え」を重んじる人は、住んでいる土地の精神論や宗教を気に掛けたくなる。

気に掛けては、たまに修行らしいことをしたい。昨年夏に座禅体験を取材する機会に恵まれた。場所は座禅会を定期的に行っている東京のある禅寺。かなりの人数が集まっていた。

わずか15分で我慢の限界が

本堂は広く、窓が開けてあったけれど、指導する住職をはじめ、マスクをしていない人が1割くらい。「密です!」という都知事の熱心な勧告がまだ記憶に新しい時期だったのに。頭を空っぽにしなくてはならないが、困ったことに「ここ、クラスターになり得るのでは?」という心配がどうしても湧いてくる。でも、これも一つの煩悩かと思って精神統一をし始めた。

ただ、精神統一と言ってもお寺からはそれほど説明があったわけではない。方法は自己流だ。住職が指し示したとおりに、目を半開きにして、あぐらのような体勢を取り、できるだけ動かないようにした。あまり何も考えないように、という指示もあった。

これをこなすのは難しくて(ごめん!)、代わりに日本に来る前から知っていた公案(禅の問答)について考えた。江戸時代の禅僧、白隠慧鶴(はくいんえかく)が提言した「隻手(せきしゅ)の声」だ。「片手で鳴らす拍手の音に耳を澄ませよ」を意味し、絶対的な境地を説くこの教えは、少なくとも半世紀前から西洋ではだいぶ注目されている。片手で鳴らす音とは......?

また、仕方のないことだが、禅寺が指示する座り方は体の硬い自分にとって苦痛そのもの。足の組み直しをあまりせずに1時間くらい座禅を続けるという話だったが、わずか15分で我慢の限界が来た。周りの人に悪いなと思いつつ、どうしても姿勢を変えなくてはならなかった(再び、ごめん!)。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは155円半ばで底堅い、円弱含みが続

ビジネス

ホンダの今期、営業利益予想2.8%増 商品価値に見

ビジネス

オリンパス、発行済み株式の5.15%・1000億円

ビジネス

ホンダ、発行済み株式の3.7%・3000億円上限に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 7

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story